道際に,あざやかな紫色の花が咲いていました。[写真1]
この場所では,はじめて見る花です。
種が飛んできたのでしょうか。
花の形が,外来種のノハカタカラクサによく似ています。[写真12](→2007年6月4日

この花も外来種ではないかなと思い,ネットで検索してみました。
意外にも,色んな意味で割とメジャーな花でした。
ムラサキツユクサ。
外来種は外来種ですが,明治時代から観賞用として栽培されていた花です。

『牧野新日本植物図鑑』(1961年)には,ムラサキツユクサについて次のように書いてありました。

北米原産の多年生草本であるが明治初年(1870年前後)渡来し,草花として諸所の畠や庭で栽培する。高さは50cm内外で多数束生する。茎は円柱形で多汁平滑,径1.5cm内外あって立ち,あおみのある緑色,葉は散生する。葉は広線形で長さ30cm内外で多くは湾曲し,茎と同色同質,先端は尖り,内面はとい状に凹み,基部はさやになっている。5月ごろから夏の間,枝先に多数の花が集まって開く。花には細い柄があり,紫色で一日花,径2~2.5cm,外花被3片は紫緑色を帯びた厚味のある革質であるが内花被3片は広く質は甚だもろくて弱い。雄しべ6個はみな完全,長い糸状の花糸には多数の紫色の毛がある。この毛は念珠状をしていて1列の細胞からなり,細胞学上の研究材料に都合がよい。やく隔は極めて広い。この種は従来,我国でT. virginiana Lと誤認したものである。〔日本名〕ツユクサに比べ特に花が大きくしかも紫だからである。

・茎は円柱形で多汁平滑
茎を切ると,九条ねぎのように,粘液がしたたり落ちました。

・葉は広線形で長さ30cm内外
スイセンのような細長い,平行脈の葉です。
[写真3][写真10]

・外花被3片は紫緑色を帯びた厚味のある革質であるが内花被3片は広く質は甚だもろくて弱い
花被(かひ)とは花冠と萼を合わせた語で,萼片と花弁が同じ形をしている場合などに,萼片を外花被(がいかひ),花弁を内花被(ないかひ)と言います。[写真4]
(ムラサキツユクサの場合は,あえて外花被,内花被といわなくてもよいような気がします。他のツユクサ科の解説との整合性のためでしょうか。)

・雄しべ6個はみな完全,長い糸状の花糸には多数の紫色の毛がある
[写真6]は雄しべの1本をとりだしたもの。
羽毛のように,細い毛が密生しています。
この毛は何のためにあるのでしょうか。
ノハカタカラクサの花糸にも同じように毛が生えていますが[写真12],その他の植物ではあまり聞きません。

・この毛は念珠状をしていて1列の細胞からなり,細胞学上の研究材料に都合がよい
[写真7]は,花糸の一部を拡大したもの。
デジカメで拡大するには,これが限界です。
それでも,細胞が数珠つなぎに一列に並んでいるのが分かりますね。
顕微鏡を使うと,「細胞」や「核」[原形質流動」などが観察できるそうです。
ネットで「ムラサキツユクサ」を検索すると,雄しべの毛だけでなく,花粉や葉などを使用した顕微鏡観察の事例がたくさん出てきます。
「ムラサキツユクサ」という名前はどこかで聞いたことがあるような気がしたのですが,中学の理科で出てきていたのかもしれません。

・やく隔は極めて広い
葯は普通,2個の「半葯」からなり,「半葯」と「半葯」の間の部分を「葯隔」というそうです。
[写真8]は,葯の部分を拡大したもの。
ひとつの花の中にも,平べったい形をした葯(写真上側)や,つぶれたような形をした葯(写真下側)があります。
[写真9]のように,蕾の中の葯は平たい形をしているので,葯が裂開するにつれて,外側からめくれ上がってゆくのではないかと思います。

・〔日本名〕ツユクサに比べ特に花が大きくしかも紫だからである
[写真11]はツユクサの花。
花も草全体の印象も,そんなにツユクサに似ているという感じがしません。