土塀にとまっていた小さなチョウ。
クリーム色の地に褐色の波模様がある,上品な感じのシジミチョウです。
よれよれに傷んでいますが,尾状突起があります。
とりあえず写真に撮り,採取しました。

数日,放ったままにした後,名前を調べてみると,意外な希少種でした。
キマダラルリツバメ。
「キマダラ」は,翅裏が黄色地のまだら模様であることから。
「ルリ」は,♂の翅表に瑠璃色の金属光沢があることから。
「ツバメ」は,尾状突起があることから。

学研『日本産蝶類標準図鑑』(2006年)には,キマダラルリツバメについて次のように書いてありました。

裏面の色彩斑紋は♂♀同じ。♀の翅表は暗褐色,翅形は丸味をおびる。♂は前後翅の基半に紫色の光沢をあらわす。ただし♂でも紫色斑がない場合があり,確実な方法として,裏面後翅の1b+C脈にそってあらわれる黒条が肛角付近の橙色斑まで達するか(♂),途中で切れるか(♀)で区別する。

この個体は翅表に紫色斑がなく,後翅裏の「1b+C脈にそってあらわれる黒条が肛角付近の橙色斑まで」達せずに途中で途切れている([写真6]矢印部分)ことから,♀です。
[写真6]の後翅は一部が欠けていて,尾状突起が1本しかありません。
本来は2本あります。
左右で4本の尾状突起をもつシジミチョウは,キマダラルリシジミだけだとか。

北海道,四国,九州には生息せず,本州のごく限られた地域にしか生息していません。
京都市はその限られた生息地の一つだったのです。
京都府レッドデータブックでは準絶滅危惧種に指定されています。
選定理由は「府内には広く分布するが、産地が局地的であるため。」

何故,生息地が限られているかというと,特殊な生態に原因があります。

ハリブトシリアゲアリと共生しており、孵化した幼虫はアリの巣内に運ばれて、アリに餌を与えられて成長する。

ハリブトシリアゲアリとの特殊な共生関係があるため、ハリブトシリアゲアリが巣をつくっている限られた木が発生木となっている産地が多い。

ネットで検索すると,今の時期,この付近に生えているヒメジョオンの花に,よくやって来るそうです。