エノキの立ち木にキノコが生えていました。[写真3]
淡い褐色をしたヒラタケ型のキノコです。
根元のくぼみに,重なり合って顔を出していました。
肉厚で,虫食いもなく,いかにもおいしそうで,食用に期待がふくらみます。

図鑑で調べると,大きさ,形はヒラタケですが,発生時期から見るとウスヒラタケのようです。
ヒラタケは別名カンタケ(寒茸)が示すように,発生時期は晩秋~春で,寒い時期のキノコです。
一方ウスヒラタケの発生時期は春~秋。
真夏の今の時期なら,ウスヒラタケの可能性が高そうです。

ヒラタケとウスヒラタケはよく似ていますが,保育社『原色日本新菌類図鑑(Ⅰ)』(1987年)の検索表には次のように書いてありました。

5.傘は初めはほぼ黒色~青味をおびた灰色,のち色あせてネズミ色,灰褐色,灰白色などとなる。ひだ実質の菌糸は薄膜……ヒラタケP.ostreatus (Jacq.:Fr.) Kummer(2)
5’.傘は初めからあわい色で,ほぼ白色または淡灰~淡褐色。傘の肉は一般に薄い。ひだ実質の菌糸はしばしば厚膜化(厚さ1~3.5μm)している。……ウスヒラタケP.pulmonarius (Fr.) Quel.(3)

要は,ヒラタケの幼菌は黒い色,ウスヒラタケの幼菌は白い色ということでしょうか。
この個体採取後に奥に残っていた幼菌は白い色をしていたので,やはりウスヒラタケということになりそうです。

同書には,ウスヒラタケについて,次のように書いてありました。

前種〔ヒラタケ〕に似るが,子実体は一般に小形で肉が薄く,また傘の色は初め淡灰色またはやや褐色で,のち白~淡黄色となるか,または初めからほぼ白色である。傘は径2~8cm。柄は長さ0.5~1.5cm,幅4~7mmであるが,ときにはほとんど認められない。肉は傘の中央部で厚さほぼ1~3mm,やや穀粉臭があるが,味は温和。ひだは幅2~4mm,密~やや疎,初め白色,のち古くなるとクリーム~レモン色をおびる。

春~秋,広葉樹の枯れ木や倒木,落枝などに群生または単生し,材の白ぐされをおこす。食用。分布:ヨーロッパ・北アメリカ(?)。国内に広く分布すると思われるが,詳細については不明。
 交配試験の結果に基づきEgerら(1979)は,前種と同一種であるとしているが,一方,Bresinskyら(1977)および大平(1977,1980)らは,別種として取り扱っている。ここでは一応別種として取り扱い,結論は今後の研究に待ちたい。

・傘は径2~8cm。柄は長さ0.5~1.5cm,幅4~7mmであるが,ときにはほとんど認められない。肉は傘の中央部で厚さほぼ1~3mm
この個体の傘の径は6~12cm。柄の長さは約7cm。[写真7]
傘の肉厚は5mm以上あります。[写真12]
大きさからすると,ウスヒラタケではなくヒラタケですね。

・ひだは幅2~4mm,密~やや疎,初め白色,のち古くなるとクリーム~レモン色をおびる。
[写真14]

・広葉樹の枯れ木や倒木,落枝などに群生または単生し,材の白ぐされをおこす
発生していた木はエノキ。
枯木ではありませんが,樹上を見上げると,枯れた枝などもあり,樹勢はかなり衰えています。[写真5]

・食用
ヒラタケにしろ,ウスヒラタケにしろ,どちらにしても食用になる優秀な食菌です。
オリーブオイルでソテーして,食べてみました。
おいしい!
風味も食感もエリンギに近い,おいしいキノコでした。
(エリンギに似ているはずで,調べてみると,エリンギはヨーロッパ原産のヒラタケ属のキノコでした。)