土塀に,ヒメカマキリがいました。[写真1]
コカマキリより,さらに小さなカマキリです。
体が小さいだけでなく,全身のバランスも,何となく寸詰まりな感じを受けますね。
前胸部が短く,腹端が角ばっているせいでしょうか。

オオカマキリ,ハラビロカマキリ,コカマキリといったよく見かける種類に比べたら,あまり馴染みのないカマキリです。
京都府レッドデータブックでは,「準絶滅危惧種」に指定されています。
選定理由は「日本固有種で、暖地性の種であり、京都府は分布の北限に近く、希少種である」。
しかし,「本州・四国・九州のカマキリ図鑑」(2015年)に掲載されている,ヒメカマキリの分布域図では,日本海側は山形県,太平洋側は千葉県になっています。
温暖化により,この種も分布域が北上しているのでしょうか。

平塚市博物館公式ページにある「カマキリの見分け方」には,ヒメカミキリの見分け方について次のように書いてありました。

A.大きさ3.5cm以下の小さなカマキリ。
   B.成虫でも翅が退化して小さい。背中の中央にこげ茶色の縦すじがある。
         ・・・・・・ヒナカマキリ(暗い林の林床を歩いている)
   B.後翅が長くて前翅よりも後ろにはみ出し、その両側がとがる。
         ・・・・・・ヒメカマキリ(神奈川県ではまれ)

・この個体は体長24mm[写真4]なので,ヒナカマキリかヒメカマキリ。
・「後翅が長くて前翅よりも後ろにはみ出し、その両側がとがる。」に該当するので,ヒメカマキリです。[写真11][写真12]
コカマキリとの違いは,コカマキリは前脚の基節と腿節に黒い模様がありますが[写真8],ヒメカマキリには黒い模様がありません[写真7]。

保育社『原色日本昆虫図鑑』(1977年)には,ヒメカマキリについて次のように書いてありました。

体色24~35mm。緑色または黄褐色。後脚腿節の先端ちかくに葉状突起がある。成虫期9~11月。林縁やかん木にすみ,卵のうは幅にくらべて背が高く,樹幹・枝や土から裸出した根,剥げかけた樹皮,板などに産まれる。日本国有種。分布:本州(静岡県以西)・四国・九州・対馬。

後脚腿節だけでなく中脚腿節にも,葉状突起があります。[写真9][写真10]
言われなければ気づかない,目立たない特徴ですね。
他のカマキリにない,この突起は何の役割をしているのでしょうか。