このところの冷え込みで,朝方に霜が降りていることが多くなりました。
といっても,まだ,踏むとパリパリと音がするほどの厳しい寒さではありませんが。

白く霜に縁どられた葉を接写してみると,意外に美しい姿が写っていました。
水晶をまき散らしたような氷の粒や,羽毛状に結晶化したものなど。
雪の結晶とは違う美しさがあります。

霜は大気中の水蒸気が,地面や地物の上で氷の結晶となったものです。(『地物(ちぶつ)』とは便利な表現ですね。「天然と人工にかかわらず,地上にあるすべての物」を表すとか。)
平凡社『世界大百科事典』(2007年)には,霜について次のように書いてありました。

冬季の晴天で無風の夜など,放射冷却によって冷やされた大気中の水蒸気が地面や地物の表面に昇華してできた氷の結晶で,うろこ状,針状,羽毛状,扇状などの形をしている。盆地などに発生した霧が,地物に付着したり,また露ができてから凍結した氷も含めて霜ということもある。一般に地上気温とは,地上1.5mの高さの気温を指していうので,地表面では接地逆転によってそれより数℃低いのが普通である。地上気温が2~3℃でも霜が降りるのは地表気温がさらに低いことによる。

「昇華」とは,「固体が液体を経ずに直接に気化して気体になる現象およびその逆に気体から直接に固体になる現象の両方」をいいます。
霜の場合は,水蒸気(気体)が水(液体)という状態を経ずに,直接氷(固体)になるということです。

12月7日の京都の最低気温は0.7℃,12月10日は1.6℃でした。
「地表面では接地逆転によってそれより数℃低いのが普通である」ので,地表面ではもっと低い零下になって霜が発生したようです。
気温が低ければ霜が発生するわけではなく,今朝(12月12日)の最低気温は0.4℃でしたが,風があったせいか霜は降りていませんでした。

1938年に初版が発行された,古典的名著とされる中谷宇吉郎著『雪』(岩波文庫1994年)には,霜について次のように書いてありました。

 霜は雪と似たものであるが,霜を仔細に観察すると2種類あることが分る。一つは無定形な氷から成り,他は結晶質から成っている。前者は,気温が零度以下ではあるが,比較的暖い時に出来るもので,後者はずっと寒い時に,即ち気温が零下十度内外あるいはこれ以下の時に出来るものである。
 結晶質の霜は,水蒸気の昇華凝縮によって出来るもので,雪の結晶の一枝と殆ど同様の構造をもっているものである。即ち雪の結晶と霜の結晶との差は,単に雪の方は空中で核から発達したもので,霜の方は地物から発達したものであるという点に帰せられるものである。しかし霜の場合は地物の熱的影響のために雪ほど完全な結晶は出来難いので,雪の場合のように千差万別の種類は生じないのである。
 もっとも霜の結晶にも平板状,針状,角柱状などの種類はあるので,本質的には雪の場合と異らないのである。

有名な「雪は天から送られた手紙である」は同書に載っている言葉です。
霜も,その形状を見れば,発生した時の気象条件がわかります。
12月7日は[写真2]のように,羽毛状の結晶ができているので,地表温度はかなり下がっていたと思われます。