色々な場所のヒメジョオンを見て回っていると(→ヒメジョオンとハルジオン),周りのヒメジョオンとそこだけ雰囲気が違う一群がありました。[写真3]
花の大きさや形は同じなのですが,葉や茎の色が普通のヒメジョオンより濃くて,少し光沢があるのです。
歩道の植樹帯に生えていて,横を通るたびに気になっています。

●[写真1][写真2]は,頭花。
ヒメジョオンと同じに見えます。

●[写真3]は,生えている状況。
道路沿いの植樹帯に生えていました。
写真左側がヒメジョオン,右側が本個体。
背の高さは,ヒメジョオンとほぼ同じです。
花が密集して見えるのは,茎がよく分枝しているせいだと思います。

●[写真4]は,茎全体の様子。
茎の高さは約80cm。
根元の葉は,ヒメジョオンと同じく枯れています。
茎上部の枝分かれがヒメジョオンより多いように思います。

●[写真5][写真6]は,本個体(左側)とヒメジョン(右側)の茎葉を比べたもの。
茎も葉も,ヒメジョオンが黄緑色なのに対して,本個体は濃緑色です。

●[写真7]は,茎下部と上部の葉の比較。
上部に行くほど葉が小さくなっています。
下部の葉には粗い鋸歯があります。

●[写真8]は,花序を横から見たところ。
蕾はうなだれているものもあります。

●[写真9]は,頭花の総苞。
毛がまばらに生えています。

●[写真10]は,頭花断面。
管状花には冠毛があります。

●[写真11]は,茎表面。
毛がまばらに生えています。

●[写真12]は,茎の断面。
中心部は,ヒメジョオンと同じように,白いずいに満たされています。
(カミソリで切断する際に,茎がとても堅かったです。ヒメジョオンはこんなに堅くはありませんでした。)

●[写真13][写真14]は,葉の表面。
まばらに短い毛が生えています。

長田武正著『日本帰化植物図鑑』(1972年)の「ヤナギバヒメジョオン」の解説に,次のように書いてありました。

津山尚(植物研究雑誌36:342,1961)によると,ヘラバヒメジョオンとヒメジョオンとの間には自然雑種ができ,それに東京付近でも6型が認められて,単為生殖によりそれぞれの特徴を保っている。共通の特徴としては茎や葉の緑の色が濃くヒメジョオンより毛が短かい。牧野富太郎がはじめに新種として上のように命名したヤナギバヒメジョオンもその6型の一つで,それは植物研究雑誌6巻10号の口絵に示されている。長田の記憶によっても当時の東京にはこの型のものが圧倒的に多かったが,今はほとんど見られない。図は山梨県河口湖畔の生品によるもので,同地にはいまもかなり多く見うける。ただし津山はこれらの雑種にいちいち学名をつけることは無用(長田もそう思う)という意見で,上の学名も使用していない。牧野新日本植物図鑑2517図その他のE.strigosusは津山説に従えば,和名をヘラバヒメジョオンとよぶことになる。

ヘラバヒメジョオンとヒメジョオンの雑種の共通の特徴として,「茎や葉の緑の色が濃くヒメジョオンより毛が短かい」とあります。
本個体は,色が濃いだけでなく,茎や葉の毛がヒメジョオンより短いという特徴もあります。
この個体は,ヘラバヒメジョオンとヒメジョオンの雑種なのでしょうか。