»»拡大
[写真1]2019/3/9
»»拡大
[写真2]頭頂部の断面
»»拡大
[写真3]葉柄付け根の断面
»»拡大
[写真4]葉柄付け根の断面
»»拡大
[写真5]葉柄付け根の断面
»»拡大
[写真6]茎の維管束痕
»»拡大
[写真7]葉の維管束痕
»»拡大
[写真8]茎の維管束痕
»»拡大
[写真9]花芽断面
»»拡大
[写真10]花芽断面
»»拡大
[写真11]葉芽断面
»»拡大
[写真12]葉芽断面
»»拡大
[写真13]2019/3/5
»»拡大
[写真14]2019/3/9
クヌギの木にたくさんの枯葉がついていました。[写真13]
立ち枯れしているのかと思いましたが,葉腋には新芽が。[写真14]
枯れているわけではないようです。
葉をひっぱると,枝にしっかりとくっついています。
そういえば同じブナ科のコナラの木も,なかなか落葉しません。
秋に枯れた葉が,落葉しないで枝に残ることを枯凋(こちょう)性といいます。
クヌギが属するブナ科や,クスノキ科,マンサク科の落葉樹に見られる特徴です。
枯凋とは「枯れしぼむこと」。
「凋」の字はあまりなじみのない漢字ですが,訓読すれば「凋む(しぼむ)」。
「字通」によると,
周は彫飾のある盾の形。凋んだ葉には,その稠密な彫文のように,一面に葉脈がうき出るので,氷結のときのさまとあわせて,凋落,凋弊の字とする。すべて皺(しわ)の生ずるようなさまをいう。
ブナ科の木には,シイ,マタバシイ,カシなどの常緑のものと,クリ,コナラ,ミズナラ,カシワ,クヌギなどの落葉性のものがあります。
ブナ科の落葉樹が,常緑樹のように冬季にも葉を落とさないという中途半端な性質を持っているのは,祖先が熱帯域に分布する常緑樹だったからのようです。
それらが温帯域へ分布をひろげるにあたり,常緑の性質(冬季に落葉しない)を半分も持ちながら,低温に対する適応として落葉性を身につけていった,と考えられています。
落葉性がなぜ低温に対する適応なのかについて,日本植物生理学会の質問コーナーに次のように書いてありました。
生葉をつけている場合、気孔をぴったり閉ざしてもクチクラ蒸散により葉は水を失います。厳しい乾燥の時期(乾季)や土壌が凍結する冬期は、土壌から吸水ができなくなります。このような時に蒸散で水を失うと、命取りです。したがって、落葉性は、土壌からの吸水の難しい時期に蒸散のおこる表面積を減らす重要な適応現象なのです。常緑性の祖先種が落葉性を獲得し落葉樹となる場合に、離層を形成し葉を物理的に「落とす」ものが大部分です。カシワなどには離層が無く、葉を速やかに落とすことはしませんが、緑葉から窒素やリンなどの有用資源を吸収し、葉への水の通導を止め、葉をからからにしますから、クチクラ蒸散は起こりません。したがって、乾燥した葉をつけてはいますが、機能的には、葉を「落とす」落葉樹とあまりかわりません。
カシワなどの葉が落葉しにくいのは,他の落葉樹にある「離層」がないためとあります。
このクヌギの木の離層はどうなっているのでしょうか。
[写真1]は,枝の頭頂部の様子。
[写真2]は,縦に切断したところ。
3個ある新芽のうち2個が葉芽,1個が花芽でした。
[写真3]は,葉柄の根元部分を拡大したもの。
葉柄と茎は,明らかに見た目が違いますね。
茎の部分が生き生きとしているのに対して,葉柄の部分は茶色く枯れています。
その分かれ目に離層はあるのかどうか。
それらしく見えないこともないですが,離層と言えるような明確な細胞構造はないようです。
維管束も切断されずに,茎から葉柄へつながっています。
葉が落ちるかどうかは,維管束の物理的な強さも関係しています。
上記サイトの別の質問への回答に次のように書いてありました。
種による違いは、離層形成がつづいて維管束を切断するようになるもの、離層形成がとても遅く(中断し)て維管束がつながった状態になるものなどに現れます。離層が維管束を切るように形成されるものでは離層細胞間の接着がゆるめば落葉しますが、切断されていない場合には維管束でつながっていて葉は落ちません。維管束の物理的な強さ如何で、早く落ちたり、遅くまで落ちなかったりします。また、春になってようやく離層が葉柄を分断するように完成するものもあります。結局、枯葉が付いている長さは、離層形成の速さ、細胞接着をゆるめる酵素類のできる速さと維管束の物理的丈夫さで決まり、そのバランスが種によって違うのだと説明することができます。
[写真4]と[写真5]は,別の個所の葉柄根元。
やはり離層の形成は不十分です。
[写真4]の葉を無理やりとったものが[写真6]です。
茎に維管束の痕が残っています。
とれた葉の根元にも維管束痕が残っていました。[写真7]