どこから入ってきたのか,1匹のキマワリが壁にとまっていました。[写真10]
朽ち木などにいる甲虫で,これといって特徴のない虫ですが,顔を拡大してみると意外に凶悪な顔をしています。[写真3]
顔が凶悪だといっても,いつもは静かに朽ち木を食べる環境にやさしい善良な虫なのですが。

北隆館『新訂原色昆虫大図鑑』(2007年)には,キマワリについて次のように書いてありました。

体長16~20mm。黒色。背面は弱い藍光沢または銅光沢を具え金銅色に光ることもある。頭は密に点刻され頭頂では皺状,眼ははなはだ大きく左右が相接近する。前頭は界線まで平たく,触角基部上方は斜に上反し,その後方は眼に深く侵入する。頭盾は中央が横に隆まり密に皺状に点刻されるが,前方では点刻がない。前胸背は点刻を密に具えるが,正中部に細く無点刻部を残し,基部近くでは点刻が弱まる。上翅は点刻を含む明らかな条溝を有し,間室は小点刻を装う。前腿節下面には鈍い歯がある。朽木や古木にみられる。

・体長16~20mm。黒色。
この個体は体長16mm。[写真1]

・背面は弱い藍光沢または銅光沢を具え金銅色に光ることもある
この個体に銅光沢はありません。[写真1]

・頭は密に点刻され頭頂では皺状
[写真2]
拡大してみると,頭部に限らず全身に点刻があります。
そういえば,ほとんどの甲虫の体の表面には点刻があります。
鉄板の鍋の打ち跡と同じように,昆虫のクチクラも点刻があると丈夫になるのでしょうか。

・眼ははなはだ大きく左右が相接近する
[写真2]
小学館『日本大百科全書』(1994年)には「目は,とくに雄では左右が接近している。」と書いてありましたが,この個体が♂なのか♀なのかはっきりしません。

・前頭は界線まで平たく,触角基部上方は斜に上反し,その後方は眼に深く侵入する
[写真3]を見ると,触角の基部がせりあがっているのがわかります。
これが顔貌を凶悪にして原因ですね。
正面から見ると,髑髏が笑っているように見えます。

・頭盾は中央が横に隆まり密に皺状に点刻されるが,前方では点刻がない
[写真3][写真4]を見ると,確かに頭盾の下半分には点刻がありません。

・前胸背は点刻を密に具えるが,正中部に細く無点刻部を残し,基部近くでは点刻が弱まる
[写真5]

・上翅は点刻を含む明らかな条溝を有し,間室は小点刻を装う
[写真6][写真7]
間室とは,翅に刻まれた溝と溝の間の隆起している部分を言います。
溝にも,間室にも点刻があります。

・前腿節下面には鈍い歯がある
前腿節には歯や刺らしきものはなく,だいぶ探しましたが,どうやら庇のように張り出している部分を「鈍い歯」と表現しているようです。
(「鈍い歯」と表現しているのは,近縁の種が「鋭い歯」をもっていることとの対比でした。)

この個体が♂なのか♀なのかはっきりわかりませんでした。
腹端を拡大してみると,先端が少し凹んで,管のようなものが突き出ているのが見えます。
タマムシの雌雄の見分け方(→2012年7月24日)からすると,腹部末端が三角形に弯入しているので♂ということになるのですが。