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[写真1]2020/5/25
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[写真2]
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[写真3]頭状花序
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[写真4]頭状花序
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[写真5]頭状花序
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[写真6]頭状花序(断面)
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[写真7]頭状花序
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[写真8]小花
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[写真9]果実
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[写真10]茎
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[写真11]葉
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[写真12]葉
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[写真13]葉
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[写真14]葉
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[写真15]根出葉
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[写真16]ハハコグサ
陽だまりの地面にチチコグサが生えていました。[写真1]
細い茎の先に,蕾なのか花なのか判然としない茶褐色の頭状花がついています。
ハハコグサ[写真16]に対して,この貧相ともいえる花をチチコグサと呼んだのは何故でしょうか。
チチとしては,そちらの方が気になる植物です。
『牧野新日本植物図鑑』(1961年)には,チチコグサについて次のように書いてありました。
山野や人家附近に普通の多年草で,地上につる枝を出して繁殖する。葉は狭長,全縁で,上面緑色,下面は綿毛があって白色である。晩春から秋にかけて,長さ10cmほどにもなる,束生の根葉中から高さ15~30cmばかり,白色の綿毛が多い細い茎を出し,分枝せず,茎葉を互生し,頂に数個の光沢のある茶褐色の頭花を密につける。総包片はへら状で褐色,中心の小花は両性花,その周囲には雌性の小花がある。そう果は白色の冠毛がある。
・つる枝を出して繁殖する
つる枝(匍匐枝)で増えるので,1本だけ単独で生えていることは少なく,何本も集団で生えていることが多いようです。[写真1]
・葉は狭長,全縁で,上面緑色,下面は綿毛があって白色である
[写真11]~[写真14]
・長さ10cmほどにもなる,束生の根葉中から
根葉(根出葉・根生葉)とは,地上茎の基部についた葉のことをいいます。
束生とは束になったように生えるということ,根葉が放射状に広がっています。[写真15]
チチコグサは茎が枯れた冬場も株はロゼット(葉がバラ模様状に広がったもの)として残り,春になり茎が伸び花が咲く時期になっても根葉は残っています。[写真2]
花時に根葉が残っているかどうかは,よく似た種類を判別するときの特徴になります。
・高さ15~30cmばかり,白色の綿毛が多い細い茎を出し
[写真10]
・分枝せず,茎葉を互生し
[写真2」
・頂に数個の光沢のある茶褐色の頭花を密につける
[写真3]
・総包片はへら状で褐色
[写真7]
・中心の小花は両性花,その周囲には雌性の小花がある
小花には舌状花はなく,すべて筒状花です。
中心に両性花,周辺に雌性花があるそうですが,小さくて細い花のうえに冠毛が密生していて,ほぐしてバラバラにしても一つひとつの花の構造はよくわかりませんでした。
[写真8]は,ようやく写した小花。
・そう果は白色の冠毛がある
[写真9]
チチコグサという名前について,『牧野富太郎植物記』のなかには次のように書いてありました。
ホオコグサに近い種類にチチコグサという草があります。この草は,ハハコグサ(母子草)というよび名ができたあと,これに対してチチコグサ(父子草)と名づけられたといわれていますが,これはこじつけのようにも思われます。
地方によってはホオコグサのことをチチコとか,チチッコとよんでいます。ですから,チチコとは父子でなく,なにか別の意味をもっているとも思われます。
ハハコグサという名前についても,ホウコグサと呼ぶべきだと主張してます。
ホオコグサのことを俗にハハコグサ,つまり母子草ともよんでいますが,正しくはハハコグサではなくホオコグサとよぶべきです。
ハハコグサ(母子草)というと母が子をいつくしむすがたを連想し,いかにもほほえましい気分になりますが,ものの名前というものはそのむかし付けられたよび名を尊重すべきです。
ホオコグサとよぶよりハハコグサとよんだほうがなんとなくほほえましいからといって,むかしから伝えられている名を捨てて,かってに新しい名をつけることはよいことではありません。
ホオコグサはむかしからホオコグサという名をもっていた草ですから,今日でもホオコグサとよぶべきです。
牧野富太郎が亡くなって60年以上。
ハハコグサをホウコグサと呼ぶべきだという主張はほとんど忘れられてしまったようです。
チチコグサの名前の由来も謎のままですね。