イタドリの実が鈴なりになっていました。
実の中心には緑色の粒(痩果)があり,周りに白い3枚の薄い幕(宿存萼)がついています。
これほどたくさんの小さな花(それも花びらのない質素な花)が密生しているのに,みんなちゃんと結実しています。
自家受粉しているのかなと思ったのですが,そうではないようです。
イタドリは雌雄異株,この株は雌株で花は雌花,自家受粉はできません。
花の少ない今の時期,様々な虫たちが訪花し小さな花一つひとつを受粉させています。
ミツバチのよい蜜源にもなっているそうです。
よく見るといくつか花も残っていました。
子房から伸びた3本の花柱が目立ちます。
雄しべは退化して花粉を出していません。
『牧野新日本植物図鑑』(1961年)にはイタドリについて次のように書いてありました。
495. いたどり 〔たで科〕
Polygonum cuspidatum Sieb. et Zucc.
( =Reynoutria japonica Houtt.)
山野のどこにでも多くはえる大形の多年生草本。根茎は木質で黄色,皮は褐色で長く地中をつらぬいてのび,各所へ芽を出す。茎はふつう粗大で直立あるいは斜めにかたむき,高さ30cm~1.5mぐらい,分枝し,中空の円柱形で,若い時は紅紫点があり,節には膜質の短いさや状の托葉がある。冬には木質の枯れた茎がのこる。葉は有柄で互生し,広卵形または卵状楕円形で,先端は短く鋭尖し,基部は切形,長さ5~15cmぐらいで葉質は硬い。夏,枝上の葉腋や,枝先に複総状様の花穂を出し,多数の小さな白色の花を密につける。雌雄異株。がくは5裂し,長さ2mm弱。外列の3個は背両に翼があり,果実の時には成長して長さ7mmぐらいになる。花弁は無い。おばなにはおしべが8個ある。めばなの子房上には3個の花柱がある。そう果は3稜のある細い卵形で,暗褐色,翼状の宿存がくに包まれている。花が紅色のものをべニイタドリ。一名メイゲツソウ(f. colorans Makino)と云う。しかし花色は株により濃淡があり,白花の普通品との間が続いていて区別ははっきりしない。山地に生えるイタドリはしばしば株が低小となり花穂が密に集まり,これをオノエイタドリ(f. compacta Makino)と云う。タケノコ形で酸味のある若い茎を生のまま食べあるいは煮て食べる。民間では根茎を薬にする。〔日本名〕痛み取りの薬効があるからイタドリ(疼取)というが,はたして本当かどうか分らない。別名をタンジ,サイタナ,古名をタジイ,サイタズマという。〔漢名〕虎杖,黄薬子。