タラヨウの枝先が折れて落ちていました。拾い上げると意外に重いです。濃い緑色の葉は大きくて分厚く,縁には鋭い鋸刃のような棘が並んでいます。赤い実がトウモロコシのようにぎっしりとついていました。一部の実は黒く変色して少ししぼんでいます。

タラヨウ
タラヨウ[ in南禅寺風呂山町 on2023/1/24 ]

タラヨウの葉裏は傷をつけると黒く変色するので,尖ったもので字を書くことができます。

タラヨウ(葉表)
タラヨウ(葉表)[ in南禅寺風呂山町 on2023/1/24 ]
タラヨウ(葉裏)
タラヨウ(葉裏)[ in南禅寺風呂山町 on2023/1/24 ]

実の頭には円盤状になった柱頭の名残が,お尻には宿存性の萼があります。

タラヨウ(果実)
タラヨウ(果実)[ in南禅寺風呂山町 on2023/1/24 ]
タラヨウ(果実)
タラヨウ(果実)[ in南禅寺風呂山町 on2023/1/24 ]
タラヨウ(果実)
タラヨウ(果実)[ in南禅寺風呂山町 on2023/1/24 ]

実の中には種子が4個入っていました。

タラヨウ(果実断面)
タラヨウ(果実断面)[ in南禅寺風呂山町 on2023/1/24 ]
タラヨウ(種子)
タラヨウ(種子)[ in南禅寺風呂山町 on2023/1/24 ]

タラヨウは雌雄異株。
花は春に咲きます。これは雄花。

タラヨウ(雄花)
タラヨウ(雄花)[ in南禅寺風呂山町 on2018/4/23 ]

これは雌花です。

タラヨウ(雌花)
タラヨウ(雌花)[ in南禅寺風呂山町 on2018/5/2 ]

『牧野新日本植物図鑑』(1961年)には,タラヨウについて次のように書いてありました。

1427. たらよう(もんつきしば,のこぎりしば) 〔もちのき科〕
  Ilex latifolia Thunb.
近畿地方以西の本州,四国,九州など暖地の山地にはえるが多くは庭園に栽培される常緑高木。高さは10m位にもなる。互生の葉は大形で短かい柄と一緒にすると長さ20cm以上にもなる。形は長楕円形で先端が尖り,辺に細かく鋭いきょ歯をもつ。厚質で硬く革質をしていて表面は平らで滑らかで光沢がある。支脈は主脈の両側に各々6~16本ある。春から夏にかけて葉腋に短かい集散花序をつけ多くの花を密につける。花は黄緑色でがくは4裂し,4個の花弁をもつ。雄花には4本の雄しべがある。両性花はやや短かい4本の雄しべと卵状の子房をもつ。核果は球形で集ってつき紅色となる。〔日本名〕多羅葉。葉面を火であぶると黒い環が現われ,また傷つけると傷痕が黒くなるので,この式で文字を書くことができる。それを経文を葉に傷つけて書く多羅樹(Borassus fabellformis Murr. やし科)の葉にたとえて名付けたもの。紋付柴も上記の性質による。鋸柴は硬いきよ歯があるからである。