春めいた日が続き,ぽつぽつとツクシが出ていました。以前に,ツクシが図鑑に載っていなくてどうしてだと戸惑ったことがあります。ツクシは誰でも知っている植物なので,植物図鑑をひけば当然載っているものだと思っていたのですが。ツクシはスギナの生殖用の茎に過ぎないので,植物名としてはスギナで引かなければならないのでした。

ツクシ
ツクシ[ in南禅寺福地町 on2023/3/17 ]
ツクシ
ツクシ[ in南禅寺福地町 on2023/3/17 ]

『牧野新日本植物図鑑』(1970年)には,スギナについて次のように書いてありました。

23.すぎな 〔とくさ科〕
 Equisetum arvense L.
 至る所の原野,道端等にはえる多年生草本。地下茎は長く地中を横走して暗褐色をなし,節から地上茎を出す。また節部に細かい毛のある小塊ができる。地上茎には栄養茎と胞子茎の2型がある。栄養茎は高さ約30~40cm。緑色中空の円柱状で,縦に隆起した線がとおり,節部から多くの枝を輪生状に密生し,節には退化縮小した舌状葉がさや状にゆ着してつく。輪生している小枝は四角柱状で節に先端が4裂するさや状の葉をもつ。春早く地下茎から,胞子茎(つくし)を出し,これは淡褐色の平滑で軟かい円柱茎で,高さ10~25cm。先が歯片状に裂けたさや状に退化した葉を節から生じ,小枝ははえない。茎頂に長楕円体の胞子穂をつけ,たて状六角形の胞子葉を密生し,胞子葉の下面に数個の胞子嚢をつけ,中に淡緑色の胞子を生ずる。胞子には4本の弾絲がついており,湿めれば,巻き,乾けばほどける運動をする。夏に栄養茎の頂部に胞子穂をつけることがあり,これをミモチスギナというが特定の品種ではない。小枝が三角柱状のものをオクエゾスギナ(var. boreale Rupr.)といい,北海道,本州北部の山地に多く知られる。昔からツクシを土筆と書くのは日本名であり,支那では筆頭菜という。ツクシを食用とするし,スギナの若葉も食べられる。スギナ(杉菜)とはその形状が杉に似ていることによる。〔漢名〕問荊。

まだ胞子を出していないツクシの頭を切ってみると,胞子嚢に抹茶のような緑色をした胞子がいっぱいつまっています。

ツクシ(未熟な胞子茎)
ツクシ(未熟な胞子茎)[ in南禅寺福地町 on2023/3/17 ]
ツクシ(未熟な胞子茎・断面)
ツクシ(未熟な胞子茎・断面)[ in南禅寺福地町 on2023/3/17 ]
ツクシ(未熟な胞子嚢・断面)
ツクシ(未熟な胞子嚢・断面)[ in南禅寺福地町 on2023/3/17 ]

胞子を出しているツクシの断面を見ると,胞子嚢が破れて胞子が放出されているのがわかります。

ツクシ(成熟した胞子茎)
ツクシ(成熟した胞子茎)[ in南禅寺福地町 on2023/3/17 ]
ツクシ(成熟した胞子茎・断面)
ツクシ(成熟した胞子茎・断面)[ in南禅寺福地町 on2023/3/17 ]
ツクシ(成熟した胞子嚢・断面)
ツクシ(成熟した胞子嚢・断面)[ in南禅寺福地町 on2023/3/17 ]