ゲンノショウコの花が咲いていました。小さな花ですが,濃い紅紫色の花弁が鮮やかです。

ゲンノショウコ
ゲンノショウコ[ in一切経谷町 on2023/8/31 ]

ネットで見るとゲンノショウコとして真っ白な花が載っていて,まったく別の花のように見えます。西日本では紅紫色の花が,東日本では白色の花が多いそうです。

『牧野新日本植物図鑑』(1961年)には,ゲンノショウコについて次のように書いてありました。

1301. げんのしょうこ(みこしぐさ) 〔ふうろそう科]
Geranium nepalense Sweet(=G.ThunbergiiSieb.etZucc.)
 野外にはえる多年生草本。茎は地面に伏しあるいは多少直立し,枝を分ける。長さ50cmに達し,葉柄のある葉を対生する。葉は掌状に3~5つに裂け,葉面には常に初めは紫黒色の斑点がある。長さ2~4cm,裂片は長楕円形,倒卵形,上部には歯があり先端は尖る。葉および茎には毛がある。夏に枝先あるいは葉間に花柄を出し,2~3個の花をつける。包葉は皮針形あるいは線形。花は白色,紅紫色,あるいは淡紅色,5花弁でウメの花に似ている。花が終って後長いくちばしのあるさく果を結び,熟すると裂開して,おのおの1個の種子をもつ五つの殻片は,その柄が中軸をはなれ,ただくちばしの先で附着し,しかも外側へ巻いて種子を飛ばす。薬草で葉を乾かしてせんじると,はらくだりの薬として有名である。〔日本名〕「現の証拠」という意味で飲むとすぐ効果が現れることにより,また果実が裂開した状態は,みこしの屋根に似ていることから,ミコシグサの名がある。一般では本種をフウロソウ(風露草,漢名ではない)と呼ぶことがあるが間違いで,この名はイブキフウロの別名である。〔漢名〕牛扁。牻牛児苗というのは誤った用法で,これはキクバフウロ(Erodium Stephanianum Willd.)を指し,日本には自生しない。

・茎は地面に伏しあるいは多少直立し,枝を分ける。

ゲンノショウコ
ゲンノショウコ[ in一切経谷町 on2023/9/5 ]

・葉柄のある葉を対生する

ゲンノショウコ(上部の葉)
ゲンノショウコ(上部の葉)

・葉は掌状に3~5つに裂け,葉面には常に初めは紫黒色の斑点がある。長さ2~4cm,裂片は長楕円形,倒卵形,上部には歯があり先端は尖る。

ゲンノショウコ(葉:表)
ゲンノショウコ(葉:表)
ゲンノショウコ(葉:裏)
ゲンノショウコ(葉:裏)

・葉および茎には毛がある。

ゲンノショウコ(茎の毛)
ゲンノショウコ(茎の毛)

・夏に枝先あるいは葉間に花柄を出し,2~3個の花をつける。

ゲンノショウコ(花序)
ゲンノショウコ(花序)

・包葉は皮針形あるいは線形。
ここでいう苞葉とは萼のことでしょうか?

ゲンノショウコ(萼)
ゲンノショウコ(萼)

・花は白色,紅紫色,あるいは淡紅色,5花弁でウメの花に似ている。

ゲンノショウコ(花)
ゲンノショウコ(花)
ゲンノショウコ(花)
ゲンノショウコ(花)
ゲンノショウコ(花弁)
ゲンノショウコ(花弁)

・花が終って後長いくちばしのあるさく果を結び
茎の先端にすでに長いくちばしのあるさく果ができていました。

ゲンノショウコ(未熟果)
ゲンノショウコ(未熟果)

ゲンノショウコの学名について,平凡社『改訂新版 日本の野生植物』(2016年)では Geranium thunbergii Siebold ex Lindl. とし,次のように書いてありました。

本種はGeranium nepalense Sweetと古くから混同されてきた。G.nepalense は,萼片の外面に腺毛がなく,花弁が長さ5-6mm,分果が長さ1.4-1.8cmとともに短いことでゲンノショウコから区別できる。アジア大陸では東方にゲンノショウコ,西方に G.nepalenseというように,大まかな地理的すみわけが認められる。