ノブドウの蔓に水色や紫色,赤紫色など色とりどりの実がついていました。[写真1]
ノブドウの実はそういうものだと思っていましたが,カラフルな実はじつは虫こぶなのだそうです。

『朝日百科 植物の世界』(1997年)に,次のように書いてありました。

秋の日を照り返す瑠璃や白磁色のノブドウの果実に,目を見張ったことはないだろうか。これは果実にブドウタマバエなどの幼虫が寄生したためにできた虫こぶで,寄生していない果実はほとんど見られない。

虫こぶとは,虫などの寄生により植物の組織が異常発達したものです。
こぶ状になることが多いので「虫こぶ」または「虫えい」と呼ばれていますが,虫以外のダニ類や線虫類,細菌,菌類(カビ,キノコ類)によってもつくられることがわかってきたので,最近は「ゴール」と呼ばれることが多くなっています。

虫こぶの名前の付け方にはルールがあって,一般的には「植物名+虫えいの出来る場所+虫えいの形+フシ」という形になっています。
ノブドウの実にできる虫こぶは「ノブドウミフクレフシ(ノブドウ+ミ+フクレ+フシ)」となります。
ノブドウミフクレフシについて,全国農村教育協会『日本原色虫えい図鑑 』(1996年)には次のように書いてありました。

ノブドウミタマバエ Asphondylia baca Monzen (1937) (=ノブドウタマバエ Contarinia ampelopsivora Shinji, 1938f)によって実に形成される球形の虫えいで,直径8.4~16.9mm。表面は滑らかで,黄白色ないしは紅赤色。内部は漿質で,通常1個,まれに2個の幼虫室が中心にあり,1個の幼虫室に1匹の橙黄色幼虫が入っている。幼虫室の内側の壁は菌糸に被われている。
生態 北海道ではノブドウで年に1世代,まれに2世代を経過する。本州以南では2~3世代を経過するものと思われる。北海道では7月上~中旬にノブドウに雌成虫が飛来し,蕾や幼果の中に産卵する。産卵は曇天日には昼夜を通してなされるが,晴天日には日中の産卵はあまり見られず,もっぱらノブドウの茎などで静止する。成虫の寿命は約2日間。卵は約7日間で孵化化し,孵化幼虫は8月上旬に2齢に, 8月中旬には3齢に達する。 3齢幼虫は虫えい内で8月下旬~9月上旬に桶化し, 9月上~中旬に成虫が羽化する。年によっては,9月に羽化した成虫が再び蕾や幼果に産卵し,ノブドウでの2世代目の成虫が10月中~下旬に羽化することがある。まれに11月上旬に虫えいの中で生存している3齢幼虫や桶が見られるが,それらは11月下旬にはすべて死亡する。このタマバ工にはカタビロコバチの1種とミフシタマバエコマユバチBracon asphondyliae (Watanabe),キタタマバエコマユバチ Bracona sunosei Maeo,オナガマルバラコマユバチTestudobracon longicaudis Maetoが寄生する。

どんな虫が入っているのか,おっかなびっくりで実を半分に切ってみました。
ところが中に虫は見当たりません。
いくつか切ってみましたが,虫が入っているものはありませんでした。[写真4]~[写真6]
未熟というわけではなく,種もちゃんとできています。

虫こぶの大きさは,上記によると「直径8.4~16.9mm」となっています。
この場所の実はほとんどが6~7㎜の大きさでした。[写真3]
これが正常な果実の大きさのようです。
平凡社『日本の野生植物  草本2離弁花類』(1982年)には,次のように書いてありました。

液果は球形で,径6-8mm,帯白色で気孔があり,淡紫色を経て,熟して空色になる。

「寄生していない果実はほとんど見られない」どころか,寄生されている果実はほとんど見られませんでした。
時期的なものなのでしょうか。