南禅寺舟溜まりに群生しているミゾソバに,花が咲いています。[写真1]
同じタデ科のソバの花に似ているそうですが,私はまだソバの花をみたことがありません。
ソバの花も群生して美しいそうです。

ミゾソバは名のとおり水辺にはえます。
以前に自宅のまわりに同じような花が咲いていて,ミゾソバだと思いこの自然観察日記にも書いたことがあるのですが,それはママコノシリヌグイの間違いでした。(→2004年9月8日

『牧野新日本植物図鑑』(1961年)には,ミゾソバについて次のように書いてありました。

原野・山路・道ばたなどの水辺に最も普通にはえる1年生草本で普通は群生する。茎は高さが30~50cmぐらいで長さは約70cmになり,まばらに枝分れし,稜があり,稜にそって下向きに小刺が生えている。葉は互生で葉柄があり,ほこ形で,中央の裂片は卵形,先端は鋭尖形,毛がまばらに生えている。短いさや状形の托葉があり,そのふちはしばしば緑色の小葉身となっている。秋,茎上の枝先に頭状様の花穂を出し,10個前後の小花を集めてつける。花柄には腺毛がある。がくほ5裂し,淡紅色。上部が紅色で下部が白色・白色・淡緑色・時には緑色などいろいろで,長さは4~6mmぐらいである。花弁はない。おしべは8個,がく片よりも短い。子房は卵形で花柱が3個ある。そう果は宿存がくにつつまれ,卵状球形で3稜があり,長さは3.5~4mmぐらいである。〔日本名〕溝に繁茂するソバの類という意味。一名ウシノヒタイというが,葉の形が牛の額のようであるからである。

・花弁はない
花弁のように見えるのは萼です。
でも花弁のように見える「萼」の外側には,さらに萼のようにものが。
これは「苞葉」らしいです。[写真5]

・花柄には腺毛がある
[写真4]を見ると,花柄に先端が球状に膨らんだ毛のようなものが生えています。
これが腺毛で,丸く膨らんだ部分に分泌物が含まれているそうです。

・葉は互生で葉柄があり,ほこ形で,中央の裂片は卵形,先端は鋭尖形,毛がまばらに生えている
毛が生えているため,触るとざらざらした感じがします。[写真7]

・一名ウシノヒタイというが,葉の形が牛の額のようであるからである。
葉の形は「牛の額」というより「牛の顔」です。
「額」は「顔」の意味も持つのかもしれないと,『日本国語大辞典』で「額」を引いてみました。

顔面の上部の,毛髪の生えぎわから眉のあたりまでのところ。また,動物のそれに相当する部分。

とあるだけで,「顔」を意味する使い方はないようです。
昔は,牛は農耕牛として身近な存在だったはずですから,昔の人がミゾソバの葉を見て「ウシノカオ」と言わず「ウシノヒタイ」と言い表したからには,そう感じる何かがあったのでしょう。

葉に牛の顔を落書きして見ました。[写真8]
今まで上部の2つのでっぱりは角だろうと思っていましたが,顔を描いてみると,このでっぱりは耳ですね。