南禅寺舟溜まりの湿地に,ミゾソバの花が咲いていました。[写真1]
水際の一画を,紅色がかった小さな花が埋めつくしています。
ミゾソバは「溝蕎麦」という名が示すとおり,水田の用水路や山野の水辺にソバに似た花を咲かせます。

以前,自宅のまわりにも同じような花が咲いていました。
ミゾソバとばかり思っていましたが,それは同じタデ科のママコノシリヌグイでした。(→2004年9月8日
水気のないところには,ミゾソバは生えないようです。

平凡社『日本の野生植物 草本2』(1982年)には,ミゾソバについて次のように書いてありました。

水湿地にはえる1年草。茎の下部は地をはい,節から根を出し,上部は直立し,下向きの刺毛があり,高さ30~100cmになる。葉は有柄,卵状ほこ形で,先は鋭尖形,基部は広心形,耳部は卵形,長さ3~12cm,幅2~10cm,両面に星状毛と刺毛があり,縁毛は密生する。托葉鞘は短い筒状で,毛があり,縁はときに葉状となる。花期は7~10月。総状花序は密な頭状をなして頂生する。花柄には腺毛がある。萼は5裂し,下部は白色,上部は紅紫色,長さ4~7mm,裂片は楕円形,先は円形。そう果は卵状3稜形,褐色で,長さ約3~4mm。北海道~九州にあり,アジア北東部に分布する。和名は溝にはえるソバに似た草の意

ここまで書いて気づきました。
昨年の10月24日にも,ミゾソバの花について書いています。(→2014年10月24日
出だしから同じようなことを書いていますね。

花びらに見えるのは萼です。
花をカミソリで切った断面を見ると,雌しべの基部にオレンジ色の突起が見えます。[写真5]
花の構造を調べようと,花被(萼)をピンセットでつまんで抜こうとするのですが,なかなかうまくゆきません。
花が小さいせいもあるでしょうが,何度も試みてもうまくゆきませんでした。

このオレンジ色の突起は一体何でしょうか。
上記の解説にはそれらしき記述がありません。
牧野植物図鑑の解説(→2014年10月24日)にも何も書いありませんでした。

花盤(かばん)でしょうか。
花盤とは,花托の一部がふくらんで雄しべや雌しべをのせる台のようになったものや,雌しべのまわりをとり囲むように隆起したものをいいます。
花盤の例としてよく取り上げられるのが,ヤブガラシの花盤です。
ヤブガラシの花は,開花から数時間すると花弁と雄しべが脱落して,オレンジ色の花盤がむき出しになります。(→2010年8月24

その他に花盤のある花は思いつかなかったのですが,「サイト内検索」で過去に書いた記事を検索してみると,ユキノシタの花にも花盤がありました。(→2010年6月9日
雌しべのまわりにある黄色いつぶつぶが花盤です。
これなどは,形状がよく似ています。

先月のヒシの花にも花盤がありました。(→2015年9月26日

花の中心にへりに歯のある黄色い花盤があり,蜜を出す。

ミカンの花なども,雌しべのまわりの花盤から蜜を出しているそうです。

ミゾソバもここから蜜を出しているのかもしれません。
[写真6]~[写真8]は,蜜を求めて集まったハナアブのなかまです。