• ウスバキトンボ
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道の真中でウスバキトンボがじっとしていました。
とまっているのか,死んでいるのか。
指でつつくと脚が動いたので,生きているようです。

手にひらに乗せ写真を撮りました。
「ウスバ(薄翅)」の名前のとおり,薄く透明な翅をしています。
翅は体の割には大きく,とくに後翅が幅広くなっています。
体はうすいオレンジ色。頭部胸部はほとんど無班で,腹部の背中側に黒い縦線があります。

福岡に住んでいた子供のころ,お盆の時期に群れをなして飛んでいた「赤トンボ」は,今から考えるとこのウスバキトンボだったようです。
黄色いのにどうしてアカトンボというのか不思議でした。
アキアカネやナツアカネは秋になると赤く色づきますが,ウスバキトンボは赤くはなりません。

山内りゅう著「田んぼの生き物図鑑」には,ウスバキトンボについて次のように書いてありました。
亜熱帯から飛来 体長は45~52mm。複眼が大きく体色は薄いオレンジ色。全体に翅は大きいが,後翅はとくに幅広い。故郷は沖縄以南の亜熱帯地方で,本州へは4~5月頃に飛来し,その後各地で世代交代を繰り返しながら日本全国に広がっていく。幼虫の成長は早く,そのため水溜まりのような一時的な水域でも生育できる。夏以降に,利用されない学校のプールなどで発生することもある。しかし,寒さに弱く,本州以北での越冬は困難である。
夏に多い「盆トンボ」 本種が田んぼでとくに多く発生する時期は,ちょうどアキアカネがいっせいに羽化して高地に移動し,田んぼが一時的に空白になる時期と重なる。おそらく,外から飛来する本種にとって,在来種と競合せずに利用できる時期をうまく選んでいるのだろう。本種も「アカトンボ」と呼ばれることがあるが,体色は赤くはならない。地方によっては「盆トンボ」と呼ばれることもあり,群れをなして田んぼや池などの上ゆっくりと飛ぶ姿がちょうどお盆の頃に目につくようになる。秋になると,水辺と関係のない空き地やグラウンドなどでも目にする機会が増える。』

写真を数枚撮ったところで,翅を震わせ,手のひらからふわりと浮きあがると,元気に飛んでゆきました。
翅を震わせたときに手に伝わってきた震動が,しばらくの間ここちよい感触として残っていました。