ひさしぶりにアカタテハの飼育ケースを覗いてみると,食痕のない,新しいカラムシの葉を綴り合わせて閉じこもっています。[写真1]
普段は同じように巣を作っても,葉は一部が食べられて萎びた感じになっているのですが。
ハサミで葉を切って中を覗いてみました。
蛹になり,尾部を固定してぶら下がっています。[写真2]
脱ぎ捨てられた脱皮殻も下に落ちていました。
[写真3]は10月10日に幼虫を見つけた時の状況です。
葉柄に噛み傷を付けてから葉を綴っているので,葉は萎びています。
でもどうしてわざわざ葉を枯らすようなことをするのでしょうか。
捕食者の目を欺くためでしょうか。
幼虫は巣の中から自分を包み込んでいる葉を食べるので,幼虫が食べるのは新鮮な葉ではなく枯れかかった葉ということになります。
新鮮なものの方がおいしいだろうにと思うのですが。
[写真4]は巣の中を覗いたところ。
幼虫が葉を綴り合わせて巣を作るのは中齢以降です。
若齢幼虫は葉に糸を吐いて隠れ家としています。
学習研究社「日本産幼虫図鑑」(2005年)には,アカタテハの幼虫について次のように書いてありました。
『幼虫は造巣性が強く,若齢は葉面に吐糸して隠れ家とし,中齢以降は葉柄に噛み傷をつけた後,葉を内側に折りたたんで柏餅形の巣を作る。巣とした葉を食べ,次々に新巣を作っていく。蛹化は食痕のない新巣中でなされることが多い。卵は1個ずつ食草の新芽や若葉表に産みつけられる。』
幼虫の食草について,学習研究社「日本産蝶類標準図鑑」(2006年)には次のように書いてありました。
『幼虫の食草はイラクサ・ホソバイラクサ・エゾイラクサ・ミヤマイラクサ・アカソ・コアカソ・カラムシ・ナンバンカラムシ(別名マオ,ラミー)・ヤブマオ・サイカイヤブマオ・ハマヤブマオ・メヤブマオ・ニオウヤブマオ(ニオウマオウ)・カテンソウ・ラセイタソウ・オオイワガネなどのイラクサ科。寒冷地ではハルニレ・マンシュウニレ・オヒョウ・ケヤキ(ツキノキ)などのニレ科を食べることも多く,またアオイ科のタチアオイ,クワ科カナムグラ・カラハナソウ・アサ・ホップ・カジノキについた例も報告されている。』