• フユイチゴ
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フユイチゴに赤い実がなっていました。
フユイチゴは草本に見えますが,木イチゴの一種で食べることができます。

日陰に生え,地面を這ってほふく枝をのばすので,実がなっていてもあまり目立ちません。
地味ですがよく見ると,まっ赤で艶々としていておいしそうな実です。
食べてみると,味は甘酸っぱくて,すこし青くさい香りがします。
甘い果物を食べ慣れている現代人には,特別おいしいわけでもない普通の木イチゴの味というところでしょうか。

花は実よりももっと目立たないようです。
9月~10月に花を咲かせているはずなのですが,いつも見過ごしています。
名前も冬に実がなることから「冬苺」です。
寒い時に実がなることから,別名「カンイチゴ(寒苺)」ともいいます。
私としては直截的な名前の「冬苺」よりも「寒苺」の方が,なんとなく趣があって好きですね。

木イチゴ類の実は,小さな実が集まった集合果です。
花にたくさんの雌しべがあり,受粉後,雌しべの子房の壁がふくらんで小核果(しょうかくか)となります。
小核果が集まり集合果となります。

「朝日百科 植物の世界」には,『1花あたりの雌しべの数は平均30本だが,1集合果あたりの小核果の数は平均10個。』とありました。
他の木イチゴ類に比べて小粒なのは,小核果になる数が少ないからのようです。

実のアップ写真[写真2]に写っている,赤い小核果から髭のように伸びているものは雌しべの名残です。
よく見ると,小核果になれなかった雌しべの残骸もたくさん写っています。

[写真3]は茎,[写真4]は葉裏の様子です。
どちらにも短い毛が密生しています。

ここで疑問が。
[写真3]を見ると,短毛とともに棘もあります。
図鑑によると,フユイチゴの茎には棘がないのが特徴のはずです。
茎に棘があるのはミヤマフユイチゴで,よく似た両種の重要な相違点の一つです。
他の特徴はどう見てもフユイチゴなのですが・・・。

「朝日百科 植物の世界」に次のようにも書いてありました。
『葉裏やがくに毛がなく,茎にとげの発達したミヤマフユイチゴR.hakonensisは,フユイチゴに酷似し,両種はいたるところで雑種をつくる。』

雑種なのか,それともこれは棘とはいわないのか,よく分りません。