オニグルミの実がたくさん落ちていました。
持って帰っても食べるわけではないのですが,うれしくて拾い集めてしまいます。
オニグルミの実は[写真5]のように,ひとつの果序に5~11個ついています。
堅果は偽果に包まれていて,そのまま落下します。
[写真4]は落ちていた偽果。
靴で踏んで転がすと,中から真黒になった堅果が現れます。[写真3]
見慣れているクルミと違ってずいぶん汚く見えますが,これは果皮に含まれるタンニンが酸化して黒くなったものです。
この液汁は黒色の染料につかわれるそうです。
[写真2]は洗った後のオニグルミ。
見慣れたクルミの姿になりました。
オニグルミは殻が固いので,中身を取り出すのがまた一苦労です。
縄文時代は石でたたき割っていたようですが,現代では電子レンジを使うと比較的簡単です。
電子レンジで加熱すると,殻の一部が口をあけるので,そこからこじ開けます。
[写真1]は,殻を二つに割ったところ。
白い部分が種子です。脂肪分を豊富に含んだ2枚の子葉から成り立っています。
クルミの実は人間ばかりでなく,ネズミやリスなどのげっ歯類が好んで食べます。
リスなどは餌を貯蔵する習性があるので,食べ残しのクルミが貯蔵場所で発芽し,結局は種子散布に協力することになります。
「朝日百科 植物の世界」(1997年)には,クルミの種子散布について次のように書いてありました。
クルミ属やペカン属の堅果を割ると出てくる大きな種子は,多量の脂肪を含んでいて栄養価が高く,ネズミやリスなどのげっ歯類が好んで食べる。これらの小動物は,秋になると冬越しのために果実を木のうろや落ち葉の下に隠す貯食性があるが,食べ残したか忘れ去られた果実が次の年に芽生えることがよくあり,果実の散布に重要な役割を果たしている。動物散布の場合は,親木からどれだけ遠くに運ばれるかが問題になるが,小型発信装置をつけたオニグルミの堅果を運ばせた実験では,ニホンリスが60メートルの距離を運んだことが確認されている。クルミ科の植物の多くは沢沿いや河川沿いに生えていて,しかも堅果の壁の内側に空洞があるために水に浮きやすくなっており,流水による散布も分布域を広げる有効な手段になっていると考えられる。
[写真6]はオニグルミの雌花です。(2004年5月5日撮影)
花弁はなく,子房の先に赤い柱頭が2本,水平に伸びています。
オニグルミは雌雄同株で,花は穂状花序(ほじょうかじょ)を構成しています。
雄花序(ゆうかじょ)は前年の枝の葉腋(ようえき)から垂れ下がり,雌花序(しかじょ)は新しい枝に枝先に直立します。
子房以外の部分が肥大した,見かけ上の果実を偽果(ぎか)といいます。
クルミ科の花が偽果をつくる過程を,前書には次のように書いてありました。
雄花序は大量の花粉を生産し,花粉は風によって運ばれる。雌花の子房を包んでいる花床(かしょう),がく片,1枚の苞,2枚の小苞は花が終わったあと発達し,子房が成熟してできた堅果を包んで偽果(ぎか)となる。