• ヒミズ
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町内の道路わきにモグラが死んでいました。

最初に見た時には,もこもことした黒い毛の塊が道路上にあるだけで,何かよくわからなかったのですが,ひっくり返してみると手足がついていました。
ネズミではなくてモグラのようです。
腹には何かに轢かれたような痕が。

モグラはこんなに鼻が長かったかなと調べてみると,ヒミズという種類でした。
ヒミズは「日見ず」で,日光のあたる場所に出てこないことに由来しています。
しかしモグラが地中生活をしているのに対し,ヒミズは半地下性のため,モグラよりも地上を徘徊することが多いそうです。

ヒミズの特徴は,半地下性なのでモグラより手が小さいこと,モグラより体が小さく,尾が長いことです。

平凡社『日本動物大百科 第1巻 哺乳類Ⅰ』(1996年)には,次のように書いてありました。

 モグラ科に属するヒミズ類は,モグラ類と同様に眼は皮下に埋まり耳介(じかい)をまったく欠くが,モグラ類に比べて体が小さく,尾が長い。土をかきわける前足は,やや幅が広いもののモグラ類ほど発達していない。落葉層,腐植層など地中の浅い部分にトンネルを掘って生活し,地表でもかなり活動するなど地下生活への適応度合いが低く, トガリネズミ類に似た半地下性の動物である。
 日本に分布する2種,ヒミズとヒメヒミズはいずれも日本固有種で, これらにもっとも近縁な種は北アメリカの大平洋岸に分布するアメリカヒミズである。 この2種は同じ場所にはみられず,標高の高い場所にヒメヒミズが, それより低い場所にヒミズが生息する。分布境界付近では,こまかくみると,岩礫(がんれき)が多く土壌があまり堆積していないところにヒメヒミズが,土壌の発達したところにヒミズが生息する。

 ヒミズは,本州,四国,九州と一部の属島に分布し,丘陵・山地の樹林,疎林,草原など多様な環境に生息するが,モグラ類の優勢な平地には少ない。ミミズ,ジムカデ,クモ,昆虫などのほか,果実,種子など植物性のものも食べる。

 地表に出るのは夜間のことが多いが,昼夜を問わず数時間の周期で活動と休息をくりかえしていると推定される。行動圏の広さは,非繁殖期には雌雄いずれも平均約1500㎡である。繁殖期になると,オスの行動圏はおよそ4000㎡と,非繁殖期の2,3倍に拡大するが,メスではあまり変わらない。非繁殖期の行動圏は,同性間ではほとんど重複しないが,異性間では大きく重なる。このような空間構造は,非繁殖期には相手の性にかかわらず他の個体を排除する「個体なわばり」をもつ種が多いモグラ類やトガリネズミ類とは異なっている。