シャガの花は奇妙です。
雌しべが見当たりません。
花びらを一枚一枚はいでいっても,雄しべはあるのですが,雌しべがどこにあるのか分らないのです。
シャガの花の構造について,すこし調べてみました。
花びらのように見えるものは,3つの部分に分かれています。[写真1]
一番大きくて美しい模様のある部分は,他の花の萼に当たる部分で,外花被と呼ばれるものです。
その内側にあるのが通常の花弁にあたる部分で,内花被と呼ばれています。
中央にそそり立つ,先端がひげ状になっているものが,雌しべ。
[写真3]は花被をはずして,雌しべだけを露出させたものです。
子房から細い花柱が伸び,先端は3つに分かれて花びらのように見えます。
シャガの雌しべが雌しべらしく見えないのは,柱頭が露出していないせいだと思います。。
普通,雌しべの先には少しふくらんでべとべとした柱頭がついているものなのですが,シャガにはそれがありません。
シャガの柱頭は,ヒゲ状になった花柱裂片の付け根あたりに小片が突き出していて,その内側にあります。
[写真4]は,花柱裂片を外へ折り曲げて柱頭を見たところ。
この構造はアヤメ属共通のもののようです。
もう一つシャガの花で特徴的なのは,外花被片に突起があること。[写真5]
シャガやヒメシャガ,イチハツの外花被片には鶏のとさかのように見える突起があるので「とさかのあるアイリス」と言われているそうです。
『朝日百科 植物の世界9』(1997年)には,シャガについて次のように書いてありました。
シャガ Iris japonicaは中国中部から日本の本州,四国,九州に見られる。生育条件と花の形が他のアヤメ属とは異なり,スギ林や竹林などの林床に生育する。日本には古く中国から渡来したといわれ,3倍体で種子はできないが,中国では種子ができる。葉は越冬性で幅が広く,緑色で光沢がある。葉の長さは30~6センチで,長くはうほっそりとした根茎から扇状に束生する。根茎から長いストロン(ほふく枝)を伸ばしてふえるため,大きな群落を形成する。花は直径約5センチ,白色あるいは淡紫青色で,外花被片の中央には黄橙色の斑紋のあるとさか状の突起がつき,そのまわりに青紫色の斑点がある。花期は4~5月。
シャガや,中国に分布するイリス・コンフサI.confusa,イリス・ウァッティイI.wattiiなどの近縁種は,外花被片に突起があって,鶏のとさかのように見え,「とさかのあるアイリス」として知られる。