アレチヌスビトハギの花。[写真1]
昼間咲いた紅紫色の花は,夕方には色あせてしまいます。
朝の散歩のときに見る花は,すべて淡い青色をしています[写真2]。
アレチヌスビトハギは北米原産の外来植物で,1940年に大阪で初めて確認されたそうですが,70年の間に,本州から沖縄にまで分布を広げています。
私の散歩コースでも,いたるところで見ることができます。
これほど分布を広げる間には,一体どれほどの数のズボンに実をくっつけたのでしょうね。
1976年発行の『原色日本帰化植物図鑑』には分布状況について次のように書いてありました。
1940年大阪府で採集され,現在近畿から東海地方を中心に局所的に雑草化。
2001年発行の『日本帰化植物写真図鑑』になると,次のように書いてあります。
昭和15年に大阪で見いだされ,荒れ地,道端に広がる。関東以西に多い。
「京都府外来生物情報」によると,現在の分布範囲は「本州―沖縄」となっています。
被害状況は「繁殖力が強いためしばしば群生し、在来の植生を圧迫する」。
おとなしく咲いているだけで,他の農作物に害を与えることはないような気がしますが,あまりにも繁殖力が強くて,在来の植生に影響を与えてしまう生態系被害があるようです。
長田武正著『原色日本帰化植物図鑑』(1976年)には,アレチヌスビトハギの特徴について次のように書いてありました。
アレチヌスビトハギ Desmodium paniculatum(L.) DC.
多年草。茎は高さ50~100cm。葉は3小葉よりなり,小葉は幅1cmから4cmまで個体により広狭さまざま,上面はまばらに毛があり,下面は多毛で淡色。花は長さ6~9mm,がくは長さ3mmほどで先は不同に4裂,下片が最も長くて細く,上・中片は三角形,上片はさらに先が浅く2裂する。果実は扁平で,かぎ状に曲がった微毛を密生,(3)4~6節にくびれ,各節間は三角形に近く,下縁は急角度に曲がり,上縁はほぼ直線状,各節1種子を入れる。花期は秋。
葉は3出複葉で,「小葉は幅1cmから4cmまで個体により広狭さまざま」。
[写真3]は葉の表面,[写真4]は裏面。
[写真5]は,在来種のヌスビトハギの葉との比較。
ヌスビトハギに比べると,小葉の先がまるく,葉柄が短くなっています。
左側の上下は小葉の幅がかなり違うので,別の種類かなと思ったのですが,「個体により広狭さまざま」とあるので,多分どちらもアレチヌスビトハギだと思います。
実は「(3)4~6節にくびれ,各節間は三角形に近く,下縁は急角度に曲がり,上縁はほぼ直線状」で,ヌスビトハギの実が2節であるのと異なります。
[写真6]の左がアレチヌスビトハギの実,右がヌスビトハギの実です。
類似種のアメリカヌスビトハギ,イリノイヌスビトハギなども日本に定着しているようです。
アメリカヌスピトハギ D.rigjdum は果実が1~3節,節間の下縁の曲がりがゆるく,花は長さ4~5mm,イリノイヌスビトハギ D.illinoense は果実の節間はほぼ円形で花は白色。
『日本帰化植物写真図鑑』(2001年)にはイリノイヌスビトハギについて,次のように書いてありました。
イリノイヌスビトハギ[マメ科]
Desmodium illinoense A.Gray (E)Illinois tick-trefoil
北アメリカ原産の一~多年生草本。茎は直立し,葉の裏面とともにカギ状に曲がった毛が密生する。葉は,長卵形の3枚の小葉からなる複葉,長い柄があって互生する。夏から秋にかけて茎の先端に長い花穂を出し,白色で長さ9mmほどの蝶形花を着ける。莢果は3~6節であまり深くくびれず,節間はほぼ円形。近畿地方を中心に道端や荒れ地に発生する。