アオキの葉の上に,緑色をした小さなクモがいました。
鮮やかな黄緑色は,葉っぱに擬態した保護色というよりは,デザイナーが塗り分けたような美しい色面をしています。
カメラを近づけても逃げずにじっとしているので,ゆっくりといろいろな角度から撮ることができました。
名前を調べると,ワキグロサツマノミダマシのようです。
どこで区切るのかわからない名前ですね。
「脇黒・薩摩・蚤・だまし」ではなく「脇黒・薩摩の実・だまし」。
「薩摩の実」とは,京都府北部の方言で「ハゼの実」のこと。
小学館『日本国語大辞典』(1981年)には,「さつま」という方言について次のように書いてありました。
さつま
方言 ①樹木,はぜのき(黄櫨)。福井県大飯郡476 京都府何鹿郡631
「薩摩の実だまし」は,緑色をした腹部の形が,ハゼの若い実に似ていることから名づけられています。
「脇黒」は,「サツマノミダマシ」というクモによく似ているが,脇が黒いということ。
小野展嗣編著『日本産クモ類』(2009年)には,ワキグロサツマノミダマシについて,次のように書いてありました。
体長雌6.5~9.5mm,雄5.5~8.5mm。背甲は褐色で前方は暗色となり,雄では暗色の縁取りがある。腹部上面は生時緑色,アルコール標本では黄白色となる。まれに中央部に暗褐色の斑紋があることがある。腹部下面は生時褐色,アルコール標本では明褐色となる。ワキグロサツマノミダマシとサツマノミダマシは大変よく似ているが次の点で識別することができる。両者ともに腹部上面は生時緑色であるが,腹部下面はワキグロサツマノミダマシでは褐色,サツマノミダマシでは線色である。アルコール標本で退色してしまっていても,ワキグロサツマノミダマシでは腹部側面に両色彩の境目がはっきりと認識できる場合が多い。
[写真3]を見ると,腹部下面が褐色となっているので,ワキグロサツマノミダマシで間違いないと思います。