今までウメだとばかり思っていた花が,本当はアンズだったとわかりました。
ウメとの比較のために,アンズの花がどこかに咲いていないかなと思っていたところだったので,意外に身近にあって驚きました。

ウメとアンズはたやすく交雑するほど近縁種で,花もよく似ていますが,ウメの花の萼は平開して,先が反り返らないのに対して,アンズの萼の先は反り返っています。
[写真2]を見ると萼の先が反り返っていて,アンズの花だとわかりました。
(ウメの萼裂片→2013年3月12日

平凡社『日本の野生植物 木本Ⅰ』(1999年)には,アンズの樹皮と花について次のように書いてありました。

樹皮は赤みをおぴ,若い枝は紫褐色で無毛。

花期は3-4月。花は前年の枝の葉腋に1(-2)個つき,柄はほとんどなく,径2.5cmほど,葉より先に開く。萼筒は円柱状で,萼裂片よりやや長い。萼裂片は紅紫色で,広楕円形,先は鈍形,花時に反り返る。花弁は円形または広卵形で,先も基部も円形で,こく短い爪状の柄があり,淡い紅色または白色。雄蕊は多数で,花弁よりすこし長く,花柱と同長,花糸には開出毛が密生する。子房は狭卵形で毛を密生し,萼筒内に収まり,花柱は毛を密生し,子房よりも長い。

ウメについては,次のように書いてありました

樹皮は暗灰色でふぞろいな割れ目ができ,しばしば地衣頬(ウメノキゴケ類など)が着生する。若い枝はふつう淡い緑色で無毛。

花期は2-3月。花は前年の枝の葉腋に1-3個つき,柄はほとんどなく,径2.5cmほどで,葉より先に開き,芳香がある。萼筒は広い鐘形で,萼裂片とほぼ同長。萼裂片は紅紫色または緑色で,広楕円形,先は円形,花時に平開し反り返らない。花弁は広倒卵形または広卵形で,先は円形,基部は広いくさび形でごく短い爪状の柄があり,紅色または白色。雄蕊は多数で,花弁や花柱より短く,花糸は無毛。子房は狭卵形で毛を密生し,花柱は無毛で,子房よりも明らかに長い。

[樹皮]
・アンズ:赤みをおぴ,若い枝は紫褐色
・ウメ:暗灰色でふぞろいな割れ目,若い枝はふつう淡い緑色
[写真6]は,アンズとウメの樹皮を比較したもの。
アンズの樹皮はサクラの樹皮にすこし似ています。
[写真5]は,若い枝を比較したもの。
確かにアンズは緑色,ウメは褐色です。

[花期]
・アンズ:
3~4月
・ウメ:2~3月
例年ならばアンズの花はウメの花の後に咲くのでしょうが,今年はウメの開花が遅れたので,ちょうど今の時期にどちらも咲いています。

[萼筒]
・アンズ:
円柱状で,萼裂片よりやや長い
・ウメ:広い鐘形で,萼裂片とほぼ同長
[写真3]は,両方の花を縦に切った断面です。
上側のアンズの花,この個体は萼筒が短いように思えます。

[萼裂片]
・アンズ:
紅紫色で,広楕円形,先は鈍形,花時に反り返る
・ウメ:紅紫色または緑色で,広楕円形,先は円形,花時に平開し反り返らない

[花弁]
・アンズ:
円形または広卵形で,先も基部も円形で,こく短い爪状の柄があり,淡い紅色または白色
・ウメ:広倒卵形または広卵形で,先は円形,基部は広いくさび形でごく短い爪状の柄があり,紅色または白色
[写真4]は,アンズの花のしべを取り除いて,スキャンしたもの。

[雄蕊]
・アンズ:
多数で,花弁よりすこし長く,花柱と同長,花糸には開出毛が密生する
・ウメ:多数で,花弁や花柱より短く,花糸は無毛
アンズの花糸には「開出毛が密生」しているのに対し,ウメの花糸は「無毛」とあります。(花糸は,雄しべの葯を支えている柱状の部分。開出毛とは茎や葉から直角に出ている毛のこと。)
[写真3]を見ると,どちらにも毛が生えているようには見えません。

[子房]
・アンズ:
狭卵形で毛を密生し,萼筒内に収まる
・ウメ:狭卵形で毛を密生

[花柱]
・アンズ:
毛を密生し,子房よりも長い
・ウメ:無毛で,子房よりも明らかに長い
[写真3]を見ると,アンズの花柱には毛が生えています。

このアンズもウメも,野生種ではなく植栽されたものなので,交雑していて図鑑の特徴そのものではないようです。
実がなったら,また比べてみたいと思います。