毎年今の時期に同じところに生えるキノコです。[写真1]
姿形からドクツルタケだろうと思っていましたが,あるとき傘に条線があることに気が付きました。
ドクツルタケは傘に条線はないはずなので,別なキノコかなと気になっているのですが,毎年迷いながら,結局わからずじまいに終わっています。

ひだは離生し,ツバとツボを持つところからテングタケ科には間違いないようです。
図鑑を調べてもぴったりと一致するものがありません。
一番近いのはやはりドクツルタケです。

『山渓カラー名鑑 日本のキノコ』(1988年)には,ドクツルタケについて次のように書いてあります。

全体が白色,傘は径6~15cm,柄は長さ14~24cm,傘ははじめ卵型,のち鐘形~円錐形から中高の平らに開き,表面は平滑。柄は繊維状のささくれにおおわれ,上部には膜質のつばがつき,根もとはやや球根状にふくらんで袋状の大きなつぼをそなえる。

この特徴と,発生しているキノコを比較してみました。

・全体が白色
[写真1][写真2]にあるようにキノコ全体が白色で,傘の頭頂部がかすかに褐色を帯びています。

・傘は径6~15cm
写真の4本の中で一番大きいもので,径は約14cm。
[写真7]は同じ日に,100mほど離れたところ(B地点)に発生していたキノコです。
同じようにドクツルタケに似ていますが,これにも傘に条線があります。
[写真8]は昨年にこの場所(B地点)で採集したキノコです。
傘の大きさを測ると,径は20cmほどあります。
ドクツルタケにしては大きすぎるでしょうか。

・柄は長さ14~24cm
柄の長さは12cmほどしかありません。
ツルタケの名はすらりとした形が鶴を連想させるところからきていますが,この場所(A地点)に毎年発生するキノコはすこし頭でっかちの傾向にあります。
B地点に発生していたキノコ[写真7]はすらりとしていて,ドクツルタケらしい形をしています。

・傘ははじめ卵型,のち鐘形~円錐形から中高の平らに開く
[写真9]は幼菌。
成熟すると平らに開き,中央部がすこし盛り上がっています。[写真7]

・傘の表面は平滑
傘の表面は滑らかで絹状のおちついた光沢があります。[写真2]
[写真3]を見ると,傘の縁に明らかな条線があるのがわかります。
同書には「条線はない」とは書いてありませんが,掲載されている写真には条線はありません。
ネットで調べると,ドクツルタケの傘には条線はないとなっていて,迷ってしまうところです。

・柄は繊維状のささくれにおおわれる
同書に掲載されている写真のような「顕著なささくれ」ではありませんが,[写真2]では柄にささくれがあります。

・柄の上部には膜質のつばがつく
[写真1][写真2]を見ると,立派なつばがあるのがわかります。

・根もとはやや球根状にふくらんで袋状の大きなつぼをそなえる
[写真5]は[写真2]の個体のつぼの部分。
[写真10]は[写真8]の個体のつぼの断面。

以前の記事(→2007年7月20日)でドクツルタケとしていたものも,B地点に発生していたものです。
いかにも「死の天使」の名にふさわしい優美な姿をしていますが,多分その個体にも条線があったのではないかと思います。

同書には,

水酸化カリ3%液を傘に滴下すると黄色になるのが本種の特徴である。

と書いてあります。
この方法を試してみたいと思うのですが,水酸化カリウム(化学式KOH)は劇物に指定されており,個人が簡単に購入できるものではありません。
買えたとしても,3%の溶液を一滴垂らすために,劇物を一瓶買うのも現実的ではありませんね。