動物園の塀にツノトンボがとまっていました。[写真1]
逆立ちするように,腹部をぴんと突き立てています。[写真2]
何かに擬態しているのでしょうか。
ツノトンボはトンボの名がついていますが,アミメカゲロウのなかまで,ヘビトンボ(→2013/7/6)にも近い種類です
ヘビトンボの長い首は何となく不気味な感じがしますが,ツノトンボの大きな目と長い触角はかわいらしいですね。
図鑑で調べると,オオツノトンボという種類でした。
日本における(アミメカゲロウ上目アミメカゲロウ目)ツノトンボ科に属する既知種は3属3種。
オオツノトンボのほかに,キバネツノトンボ,ツノトンボの3種が知られています。
北隆館『新訂 原色昆虫大図鑑 第3巻』(2008年)には,オオツノトンボについて次のように書いてありました。
開張85mm内外。本属は前2属と亜科を異にし,前2属においては複眼は1小溝によって2個の部分に分割されているが,本属のものは完全である。本邦産の本属は本種のみで,本州・四国および九州の山地に生息し, 6月下旬から8月下旬まで獲られるが個体数は少ない。
北隆館『日本昆虫図鑑』(1956年)には,次のように書いてありました。(原文は旧漢字)
体は黒色。頭,胸両部に黒色の長毛を密生するが,顔面,胸側並に腹面には灰白色を生ずる。触角は黒褐であるがその杓子部は黒色。額片,上唇及び触角の嵌入部は黄色。複眼は黄褐。脚黒色,ふ節褐色,脚には黒毛を密生する。翅は透明であるが,前縁室は暗褐を呈することが多い。翅脈は黒色であるが,亜前縁脈,径脈は多少赤味を帯びている。縁紋黒褐,これに前後翅とも4個内外の横脈がある。腹部黒色,雄は尾端に細い三角形状の付属物がある。体長 雄22mm内外,雌25mm内外。翅開帳 雄70mm内外,雌35mm内外。本州,九州に分布し,成虫は7月に出現する。比較的稀種に属する。
・前2属においては複眼は1小溝によって2個の部分に分割されているが,本属のものは完全である
キバネツノトンボ,ツノトンボでは複眼に溝があって上下に分かれているそうです。
本種では複眼に溝はありません。[写真8]
・頭,胸両部に黒色の長毛を密生するが,顔面,胸側並に腹面には灰白色を生ずる
[写真8][写真4]
・触角は黒褐であるがその杓子部は黒色
[写真7]
・額片,上唇及び触角の嵌入部は黄色
[写真8]
・複眼は黄褐
[写真8]
・脚黒色,ふ節褐色,脚には黒毛を密生する
[写真8]
・翅は透明であるが,前縁室は暗褐を呈することが多い。縁紋黒褐,これに前後翅とも4個内外の横脈がある
[写真6]
アミメカゲロウ目の検索表では,縁紋部後室が「はなはだ長い」のがウスバカゲロウ科で,「短い」のがツノトンボ科となっています。
・腹部黒色,雄は尾端に細い三角形状の付属物がある
[写真3][写真4]
腹部の背側は黒色で,腹側は白色です。
尾端に「細い三角形状の付属物」がないので,この個体は雌です。
・体長 雄22mm内外,雌25mm内外。翅開帳 雄70mm内外,雌85mm内外
この個体は体長30mm,翅開帳70mmでした。[写真3]
両書とも,「個体数は少ない」「比較的稀種に属する」と書いてあります。
スキャンする時に翅がボロボロになってしまい,もっと丁寧に扱えばよかったと後悔しています。