南禅寺橋の近くで,浅瀬に小さな二枚貝の空殻が散乱しているのに気付きました。
シジミのようです。
琵琶湖由来のものだとすると,セタシジミかなと期待したのですが,違いました。

セタシジミは殻長より殻高が高く,殻頂部が大きく盛り上がっています。
ここの貝殻は,殻高より殻長の方が長く,横長で殻頂部もそれほど盛り上がっていません。

日本にいる主なシジミは,ヤマトシジミとマシジミ,セタシジミの3種です。
ヤマトシジミは汽水性(海水と淡水とが混じり合っている水に棲む)なので該当しません。
淡水性なのはマシジミとセタシジミで,セタシジミでないとなればマシジミということになります。
しかし,そう簡単にはいきませんでした。

今,北海道を除く全都道府県で,マシジミによく似たタイワンシジミという外来種が増えているというのです。
最近,川にシジミが戻ってきた,自然が回復してきたと話題になるものの多くは,実は繁殖力が旺盛なタイワンシジミなのだそうです。

ピーシーズ『日本産淡水貝類図鑑 ②汽水域を含む全国の淡水貝類』(2004年)には,タイワンシジミについて次のように書いてありました。

国内では1987年に岡山県倉敷市で確認され,約10年後の1996年頃から相次いで北関東から四国,九州の広範囲で自然繁殖していることが判明した。マシジミやタイワンシジミの受精では,減数分裂しない精子と卵子の核は融合せず,第一分裂時に卵子の核は極体として卵外に放出される。遺伝子としては精子由来のみとなり,卵は栄養体となるようだ。
 仮に,精子量の著しく多いタイワンシジミの精子が水中に頻繁に放出され,これをマシジミが取り込んで,タイワンシジミとマシジミが見かけ上の交雑をしてしまえば,遺伝型はタイワンシジミになってしまう。実験的に両者を交雑させて立証されたわけではないが,タイワンシジミが参入してから2~4年(マシジミの推定寿命ともほぼ一致する)で,マシジミの若令がいなくなり,やがてマシジミが絶えてしまう事実は,今のところ,先の交雑?による単一種化と推測され,タイワンシジミが優位な立場にあるようだ。

マシジミとの見分け方については,次のように書いてありました。

●殻表面の輪肋間がマシジミより広く規則的に配列。
●小月面や楯面が色分けされたり輪郭が明瞭(マシジミの淡色型にもある?)。
●幼貝時に茶褐色の細い放射状線がある。
●殻表面が鮮黄色から濁黄色。オリーブ色などの淡色系が多い。
●内面が白色系の場合,鉸歯は淡紫色から黒紫色に決められる(カネツケシジミ型)。
●殻内面は白色・藤色・帯桃色などがあり,青色系では殻頂部付近が濃く,殻縁に向かって淡くなる。
●内面が有色型の復縁部は,明瞭な黄褐色に縁取られる。
上記の特徴のいくつかが当てはまれば,タイワンシジミ種群とみなして差し支え軽いと考えられるが,いずれにしろ似たりよったりなことと,私見であることを断っておきたい。

[写真2]は,生きている個体。
[写真3]は,それをゆでて殻をあけたもの。
[写真6][写真7]は,並べてスキャンしたもの。

図鑑を見比べてもどちらかはっきりしないのですが,殻内面を見ると,「殻頂部付近が濃く,殻縁に向かって淡くな」っているので,タイワンシジミの可能性が高いのではないかと思います。