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[写真1]2014/6/1 6:55
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[写真2]2014/7/4
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[写真3]2014/7/4
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[写真4]2014/7/4
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[写真5]2014/7/1 8:57
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[写真6]2014/7/4
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[写真7]2014/7/4
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[写真8]2014/7/8
小さなイトトンボが飛んできて,草の葉に止まりました。[写真1]
羽化したばかりのようで,まだ体が薄い色をしています。
この場所では,先日セスジイトトンボ(♀)が羽化していました。(→2014年6月26日)
多分,同じセスジイトトンボだろうと思い捕まえて調べてみました。
ところが,「セスジイトトンボ」か「ムスジイトトンボ」なのか,どちらかよく分からないのです。
ミナミヤンマ・クラブ『近畿のトンボ図鑑 』(2009年)に載っていた,「セスジイトトンボ」「ムスジイトトンボ」の成虫の相違点をまとめると,次のようになります。
セスジイトトンボ | ムスジイトトンボ | |
体長 | 27-37mm | 30-38mm |
眼後紋 | 三角形で大きい | 細い。ほとんど消えている個体もある |
後頭条 | ある (♂にはない個体もある) |
|
背隆線の黒条に淡色条 | ♀にはある。 ♂にはない。 |
♀にはある。 ♂にはない。 |
肩縫線の黒条に淡色条 | ある (♂にはない個体もある) |
♀にはある。 ♂にはない。(稀にわずかに現れる個体もある) |
尾部付属器 | 八の字に開いていて先はとがる | 上付属器は小さい |
♀は前胸の後縁が富士山型にえぐられている |
・まず,この個体には副性器があるので♂です。[写真3]
・体長は約32mm。[写真2]
→両種にあてはまります。
・眼後紋はありますが,かなり小さいです。[写真4]
→セスジイトトンボの眼後紋は「三角形で大き」く,ムスジイトトンボは「細い。ほとんど消えている個体もある」ことから,ムスジイトトンボに合致します。
・背隆線黒条のなかには淡色条はありません。([写真4]ではフラッシュの光が反射して,白い筋が映っていますが,黒条のなかに淡色条はありません。)
→♂の場合は両種ともないので,どちらにもあてはまります。
・肩縫線の黒条には,淡色の筋がわずかにあります[写真3]。
→セスジイトトンボは「ある(♂にはない個体もある)」,ムスジイトトンボは「♂にはない。(稀にわずかに現れる個体もある)」。
どちらかは五分五分ですね。
ムスジイトトンボの♂は「稀にわずかに現れる個体もある」となっていますが,「♂は肩縫線黒条の中にわずかに淡色部が見られることが多」いと説明するものもあります。(→神戸のトンボ)
・頭部の後頭条は微妙です。[写真4]を見ると,後頭条があるような,ないような,はっきりしません。
→『近畿のトンボ図鑑 』には,セスジイトトンボは「ある(♂にはない個体もある)」となっていますがムスジイトトンボについては,あるともないとも書いてありません。(『日本トンボ幼虫・成虫大図鑑』の検索表ではムスジイトトンボの後頭条は「ない」になっています。)
・尾部付属器は,八の字に開いているように見えます。[写真5](尾部付属器は1mmに満たない小さなもので観察は容易ではありません。生きている間に尾部付属器を拡大して撮った写真がなかったので,標本にしたものを接写したのですが[写真8],劣化が激しくて詳細がよくわかりません。)
→どちらともはっきりしません。
結論としては,ムスジイトトンボの♂だろうと思います。
トンボは死後の劣化が激しく,標本では細かいところがよくわかりません。
生きている間に,要点を押さえて,観察しておくことが大事なのだとつくづく思いました。