家の前の道に,タマムシが歩いていました。[写真1]
飛び立たないうちにと,急いで捕まえました。
しかし,あわてなくてもよかったようです。
右上翅が半分,欠けています。[写真2]

上翅だけが欠けて,後翅が欠けていないということは,翅を広げて飛んでいる時に襲われたのでしょうか。
タマムシが金属光沢のある構造色をしているのは,鳥がキラキラとしたものを嫌うためと聞いたことがあるのですが,案外そうではないのかもしれません。
以前にも,腹部を鳥に食べられたらしいタマムシがいました。(→2012年8月1日

タマムシは,触角から肢の先まで,見事に構造色で覆われています。
通常は翅に隠れている,腹部の背面側も,翅の下は金属光沢があります。[写真5]
上翅の裏側も,一見黒っぽいのですが,光のあたり方で金属色に輝きます。[写真6]
唯一,構造色がないのは,後翅です。[写真7]
他の甲虫と同じような,半透明の褐色をしています。
後翅は,飛ぶために薄い膜状になっているので,金属光沢を有しないのでしょうか。
惜しいですね。
後翅がモルフォ蝶のような輝く翅をしていたら,それこそ完璧だったのですが。
(後翅を光にかざしてよく見ると,光のあたり具合によっては,一部金属光沢に輝く部分があります[写真8])

保育社『原色日本甲虫図鑑』(1986年)には,タマムシ科について,次のように書いてありました。

頭部の顔面は垂直,後頭は前胸中に深くはまりこむ。大あごなどの口器は小さく,背面からはほとんどみとめられない。触角は11節,まれに10節,第3または第4節から鋸歯状となるが,まれに先端4節のみの場合がある。前胸背板の基部は上翅の基部と密着し,間隙を残さない。腹部腹板は5節,第1および第2節はつねに癒合し不可動。,その会合線もときに消失する。両前基節窩は後方に開き,前胸腹板突起により隔てられ,相接することはない。

[写真9]~[写真11]は,タマムシの口器です。
見慣れた他の甲虫の大顎と異なり,太くて鋭さがないですね。
触角は11節です。[写真12]

タマムシについては,次のように書いてありました。

25~40mm。緑色部は方向により紫藍色となる。体下は金緑色,側方および腹端に向けて銅赤色を増し,腹端部は金銅赤色。まれに背面全体が鉄銹色を帯びる。 ♂は複眼が大きく,突出し,腹端が三角形にえぐられ, ♀は複眼の突出が弱く,腹端がまるい。 7~8月。エノキ,ケヤキ,サクラ,カシ類などの枯木につくが,モミ,カキなどについた記録もある。

この個体の体長は,38mm。[写真3]
「複眼の突出が弱く,腹端がまるい」ので♀です。
タマムシの雌雄について→2012年7月24日