ひょっとして,マイタケ?
シイの木の根元に,ハボタン状の塊になったキノコが生えていました。[写真1]
へら形の傘が幾重にも重なりあって,傘の形がスーパーで売っているマイタケとよく似ています。[写真2]

本当にマイタケでしょうか。
すこし持ち帰ろうと思うのですが,足場が悪くてナイフが使えず,片手を伸ばしてようやく一部だけをもぎ取ることができました。
ナラタケのように多数の個体が束生しているのではなく,たくさんの傘が基部で一つにつながっています。
いわゆるマイタケ型といわれる形です。

『山渓カラー名鑑 日本のキノコ』(1988年)には,マイタケについて次のように書いてありました。

マイタケ属。材上生。幅2~5cmで扇形~へら形の傘が多数重なり合い押し合って集団状となり,径30cmもの大株になる。縦断すると内部は根もとの太い柄から幾回も枝を分け,小枝の先端に小型の傘をつけることがわかる。このような形をマイタケ型という。傘の表面はねずみ色~黒褐色,下面の管孔面は白い。肉は白くやわらかで歯切れのよい肉質。

秋,9月下旬~10月上旬にブナ科の大木の根もとに発生する。

このキノコがマイタケなのか検討してみました。
・材上生
シイの幹の根元から生えており,材上生で間違いありません。

・幅2~5cmで扇形~へら形の傘が多数重なり合い押し合って集団状となり
[写真6][写真7]は,大きめの傘を一つ切り取って,表裏を写したもの。
幅は約5cm,へら形をしています。

・径30cmもの大株になる
株全体の大きさは測っていませんが,もぎ取った部分の大きさが15cmほど[写真3]なので,全体の径は30cmほどになります。

・縦断すると内部は根もとの太い柄から幾回も枝を分け,小枝の先端に小型の傘をつけることがわかる。このような形をマイタケ型という
[写真5]は,縦に切断した断面です。
太い柄から枝が何本も,複雑に枝分かれしながら出ているのがわかります。

・傘の表面はねずみ色~黒褐色,下面の管孔面は白い
傘の表面は褐色,下面全体に白い管孔が密生しています。
[写真8]は管孔部分を拡大したもの。

・肉は白くやわらかで歯切れのよい肉質
オリーブオイルで炒め,食べてみました。(マイタケに似た毒キノコはないそうです。もしマイタケでなかったとしても大丈夫なはず……)
少し固いです。
天然マイタケへの期待値が上がりすぎていたせいか,期待したほどのおいしさではありませんでした。

・9月下旬~10月上旬にブナ科の大木の根もとに発生する
発生していたのは9月下旬なので,時期的にはあっています。
発生場所も,ブナ科であるシイの木の根元で間違いありません。
しかしそれほど大木という訳でもありません。

ネット上にある,たくさんのマイタケの画像とも見比べてみました。
結論としては,このキノコはマイタケで間違いないようです。
マイタケは深山に生えるイメージがあったのですが,意外に身近に生えていました。

ただ,食べるにはもうすこし新しい方がよかったようです。
マイタケは古くなるにつれて色が薄くなり,肉質も固くなるそうです。

今朝,残っていた株を全部,根株まできれいに取り除いてきました。
マイタケは採取せずにほうっておくと,その場所には翌年以降発生しないとか。