大きなガの死骸が落ちていました。[写真1]
鳥に襲われたのか,片側の翅がありません。
大きな褐色の翅に眼状紋。ヤママユのなかまのようです。

図鑑で調べると,クスサンでした。
「樟蚕」と書くので,クスノキにいる蚕の意だろうと思います。
北隆館『原色昆虫大図鑑1』(2007年)にはクスサンについて,次のように書いてありました。

♂の触角は羽毛状,各節から2対の枝が出る。♀では櫛歯状,基部の枝は長く,末端の枝は短かい。色彩の変化はたいへん強く,灰黄色・黄褐色・赤褐色など。前翅の2横線の間は白っぽく,後翅の眼状紋のなかは大部分が黒い。前翅の中央を走る横線は常に横脉紋の外側を通るが,ごくまれには内側を通るのもある。

前翅長: 53~65mm。年1回の発生で,9~10月に出現し,平地山地に多産する。食草の範囲はきわめて広く,クルミ・ウルシ・ハゼ・ヌルデ・ケヤキ・ミズキ・コナラ・クヌギ・クリ・カエデ・サクラ・リンゴ・ナシ・ウメ・モモ・アンズ・クスノキ・サルスペソ・カツラ・スズカケノキ・イチョウなどの葉を食べ,大害を与えることがある。幼虫は白色の長毛におおわれているので,シラガタロウともよばれ,またクリケムシという名もある。幼虫の絹糸腺からはテグスのような丈夫な絲がとれる。マユは網状で内部の蛹が見えるところから,スカシダワラなどとよばれ,これをほぐしたものを栗綿といって紡績の原料となる。卵で越年する。

雌雄の区別は,他のガと同じように触角で判別します。
触角が羽毛状なら♂,櫛歯状なら♀。
この死骸には触角が欠けていて,雌雄はわかりませんでした。

ガの種類によっては,翅の形や色彩斑紋が雌雄で異なる場合も多いのですが,上記解説には触れられていないので,雌雄による斑紋の違いはないようです。
その他に,多くのガのなかまでは「翅棘(しきょく)」の本数でも雌雄が判定できます。
しかし,ヤママユガ科に翅棘はなく,翅だけでは雌雄の判定はできないようです。

クスサンの繭は,「網状で内部の蛹が見えるところから,スカシダワラなどとよばれ」ています。
網状の繭は,おもしろい形をしていますよね。
実物は見たことがないので,一度見てみたいものです。
(ヤママユの繭→2005年1月13日  ウスタビガの繭→2012年6月26日

成虫自体も,「平地山地に多産する」そうですが,このあたりではあまり見かけません。
いるところにはたくさんいて,クリやウメの木を食いつくす害虫とされています。

ヤママユガ科のなかま
[写真4]ヤママユ→2005年8月28日
[写真5]ヒメヤママユ→2009年11月11日
[写真6]シンジュサン→2004年6月12日
[写真7]ウスタビガ→2005年11月22日
[写真8]オオミズアオ→2011年5月16日