歩道に,マテバシイの果穂が落ちていました。[写真1]
大きなドングリが殻斗から外れて,近くにころがっています。
小粒のカボチャのような形をしたドングリは,成熟できなかったシイナです。
全部で27個ついていました。

マテバシイは,春に新枝の下部に雄花序,上部に雌花序をつけます。[写真13]
雄花序には雄花を,雌花序には雌花を付けるのですが,雌花序は先端部に雄花がつきます。
(マテバシイの花について→2018年5月26日
受精した雌花は,翌年の秋に成熟してドングリとなり,花穂は果穂となります。
落ちていた果穂を見ると,先端に雄花の名残がありますね。

ながい間,このマテバシイの木はシリブカガシだと思っていました。
ドングリの形が,今まで見てきたマテバシイのドングリより,ずんぐりしていたからです。
京都御苑に落ちているマテバシイのドングリは,よく例えられる「砲弾型」そのもので,本当にピストルの弾丸のようなスマートな形をしていました。
(花が5月に咲いたのでマテバシイだと気づきました。シリブカガシは9月~10月に花が咲きます。)

比較のために,京都御苑のマテバシイの実を拾いに行ったのですが,どういう訳か見当たりません。
丸太町通りから入ったすぐ西側に,大きなマテバシイの木があったはずなのですが。
周辺を探したものの,結局みつけることができませんでした。

ネットで調べてみると,京都御苑のマテバシイは2010年頃に発生したナラ枯れによって,かなりの数の木が枯れたそうです。
それも大径木ほど。
(→「都市林に発生したブナ科樹木の萎凋病―京都御苑における被害の実態―」
ナラ枯れについては,九条山周辺の状況について2010年9月21日2012年5月15日に書いています。

ついでに京都御苑で,シリブカガシのドングリを拾ってきました。
マテバシイもシリブカガシも,堅果の底が凹んでいます。
シリブカガシは「尻深」と名前についているくらいですから,マテバシイより凹み具合が大きいのかと思っていましたが,並べてみると同じくらいの凹み加減ですね。[写真15]
シリブカガシのドングリは下部がすぼまっていて,マテバシイより底の径が小さくなってます。
その分,凹みが強調されて見えるようです。

[写真1]は,歩道に落ちていたマテバシイの果穂。先端に雄花の名残がある。(2018年10月19日)
[写真2]は,周辺に落ちていたドングリ。
[写真3]は,マテバシイの殻斗。屋根瓦のように並ぶ鱗片が特徴。シリブカガシも同じ特徴を持つ。
[写真4]は,堅果が脱落した後の殻斗。底に突起がある。
[写真5]は,堅果の底。くぼんでいる。
[写真6]は,前年枝についた果穂。(2018年10月19日)
[写真7]は,前年枝果穂のシイナ。先端に花柱の名残がある。
[写真8]は,前年枝果穂のシイナ。殻斗がはがれ,中身が露出したもの。
[写真9]は,本年枝についた果穂。(2018年10月19日)
[写真10]は,本年枝果穂の雄花序と雌花序。雌花序には,未熟な堅果がついている。
[写真11]は,本年枝果穂の雌花。総苞が膨らみ,鱗片に覆われている。
[写真12]は,本年枝果穂の雄花。花は脱落することなく,そのままついている。
[写真13]は,開花時期の花穂。(2018年5月26日)
[写真14]は,シリブカガシとマテバシイの堅果。シリブカガシの下部はすぼまっている。
[写真15]は,シリブカガシとマテバシイの堅果。底の凹み部分は,シリブカガシの方が小さい。
[写真16]は,シリブカガシとマテバシイの殻斗。どちらも瓦状の鱗片が並ぶ。