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シリブカガシ

2018年11月11日

京都御苑でシリブカガシのドングリを拾ってきました。
マテバシイのドングリと比較するためです。(マテバシイとの比較→2018年11月3日
九条山周辺でシリブカガシを探したのですが見当たらず,京都御苑まで探しに行きました。

シリブカガシは暖地に生える木で,図鑑(保育社『原色日本植物図鑑』(1985年))によると本州の分布地は「近畿地方以西,京都では保津峡が北限」とあります。
『京都の花木百科』(1994年)には,分布は「京都市近郊では,保津峡の落合,宇治市白川谷など」となっています。
地図で確かめたところ,京都御苑と保津峡はほぼ同じ緯度でした。

もっとも京都御苑のシリブカガシは,自生ではなく植栽されたものです。
京都御苑は,明治になって空家となった京都御所周辺の公家屋敷を取り除き,整備された場所です。
中央部には松や桜,楓などが,外周部にはシイ・カシ類が植えられました。
それから100年以上たって,いずれも大木になっています。

『牧野新日本植物図鑑』(1961年)には,シリブカガシについて,次のように書いてありました。

暖地にはえる常緑高木。幹は直立して分枝し,高さは15mにもなり,樹皮は暗色である。若い枝には淡黄褐色の密生した軟短毛がある。葉は有柄,互生,倒皮針形あるいは長楕円形,先端は急に尖り,基部はだんだんせばまり,葉質は革質,全縁,表面は黄緑色で光沢があるが裏面は伏した毛が密生し,銀白色にみえる。葉の長さは10~15cm。秋の終り頃,葉腋や枝の端に穂状花序を出す。花軸は淡黄褐色の軟短毛が密生し,剛直である。おばなの穂は枝の上部から出て長さ5~10cm,斜めに立ち,しばしば下部で分枝する。おばなは3個ずつが集合している。めばなはおばなの穂の下部につくかあるいは下部の葉腋に別に短い花穂をつくる。めばなは総包中に1個ずつあり,総包は平たい球形である。堅果は翌年の秋の花期に熟し,楕円形,長さ2cm,殻斗は洗い皿状である。種子は食べられる。 〔日本名〕尻深ガシの意味で堅果の底部の附着点が凹入していることに基ずいたものである。

・幹は直立して分枝し,高さは15mにもなり,樹皮は暗色である
[写真4]はシリブカガシの幹です。
幹の下部は妙にテカテカしていて,触ってみると樹脂を塗ったようにカチカチに硬くなっていました。
[写真5]はテカテカより上の部分で,小さな穴がいくつもあいています。
どうやらこの穴は,ナラ枯れを媒介するカシノナガキクイムシの穿入孔のようです。
ナラ枯れの防除方法として幹に防護剤を塗るという方法があるそうなので,テカテカしたものは保護材なのかもしれません。

・若い枝には淡黄褐色の密生した軟短毛がある
[写真6]は,シリブカガシとマテバシイの若枝を比較したもの。
シリブカガシの若枝は短毛に覆われているのに対し,マテバシイの若枝には毛が少なく,縦に浅い溝があります。

・葉は有柄,互生,倒皮針形あるいは長楕円形,先端は急に尖り,基部はだんだんせばまり,葉質は革質,全縁
[写真7][写真8]は,マテバシイの葉との比較。
どちらも常緑樹特有の分厚い濃緑色の葉です。
見比べると,シリブカガシの葉の方が若干薄く感じられます。
マテバシイの葉が平滑なのに対して,シリブカガシの表面は葉脈に沿って凹み,すこし波打っています。

・(葉の)表面は黄緑色で光沢があるが裏面は伏した毛が密生し,銀白色にみえる
[写真9]は,葉表面の拡大。
[写真10]は,葉裏面の拡大。

・秋の終り頃,葉腋や枝の端に穂状花序を出す
花が咲く時期と,実が熟する時期が同じなので,ドングリと花を同時に見ることができます。
他のシイ・カシ類の花は春に咲くのに,どうしてシリブカガシだけ秋に咲くのか。
興味深いですね。

・花軸は淡黄褐色の軟短毛が密生し,剛直である
[写真11][写真12]
シリブカガシは,若枝も,葉裏も,花軸もやたらと毛が密生しています。
動物なら保温という大きな役目があるのですが,体温のない植物では……。

・おばなの穂は枝の上部から出て長さ5~10cm,斜めに立ち,しばしば下部で分枝する
[写真13][写真14]

・おばなは3個ずつが集合している
[写真12]を見ると3個ずつ集合しているかなとも見えるのですが,ブラシ状に密集して咲いている場合も多いです。
雄花ではなく雌花は確かに3個ずつ集合しているのですが。[写真11]

・めばなはおばなの穂の下部につくかあるいは下部の葉腋に別に短い花穂をつくる
雄花のつく雄花序と,雌花のつく雌花序があるとして,雄花と雌花の両方をつけている花序はどう表現したらよいのか迷うところです。
「雄花序の下部に雌花をつける」と「雌花序の上部に雄花をつける」は同じことを表現していると思うのですが。
「めばなはおばなの穂の下部につく」は「雌花は雄花序の下部につく」ということですが,別の図鑑では「雌花序の上部にはしばしば雄花がつく」と表現しています。
どちらでもよいのですが,写真に説明文字を入れるときに迷ってしまいます。

・めばなは総包中に1個ずつあり,総包は平たい球形である
[写真15]
花柱は3個あります。
総苞はドングリの殻斗になります。

・堅果は翌年の秋の花期に熟し,楕円形,長さ2cm,殻斗は浅い皿状である
花が咲いた翌年にドングリとなるものを2年型といいますが,秋に開花し翌年の秋に実が熟するので,実質1年でドングリになります。
表面は白く粉を吹いたようになっていますが,これは蝋物質らしいです。[写真1][写真2]
指で触ると,体温で簡単に溶けてなくなります。
殻斗には瓦状の鱗片が並んでいます。[写真16][写真17]

・種子は食べられる
(紙袋に入れて)電子レンジで加熱してみました。
よい匂いがしています。
殻が堅いのが難点ですが,意外においしいです。
マテバシイよりはおいしく感じました。

・〔日本名〕尻深ガシの意味で堅果の底部の附着点が凹入していることに基ずいたものである
ドングリが落ちると,殻斗の底には出っ張りが残っています。[写真18]
その分,ドングリの底は凹んでいます。[写真19]
マテバシイのドングリも同じように底が凹んでいます。[写真20]
シリブカガシのドングリは下部がすぼまっていて,マテバシイより底の径が小さくなってます。

京都御苑を歩くと,9月4日の台風21号の影響がまだかなり残っていて驚きました。
九条山周辺の被害状況
根っ子ごと横倒しになった木とか,大きな枝が折れたままになっている木とかが残っています。[写真21][写真22]
2か月たっているのに,御苑でさえこの状況とは。
東山とか北山とかでは,あまりの倒木の多さに対応ができていません。
近くの谷筋でもたくさんのヒノキがなぎ倒され,今もそのままになっています。

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