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[写真1]2019/7/16
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ブラインドのひもをつたって,羽根アリが1匹のぼってきました。
黒い色をしているのでシロアリではないようですが,羽根のついたアリを見つけると何か不安になります。
名前を調べてみると,トビイロケアリでした。
トビイロケアリは日本全土に分布する,最も普通に見られるアリだそうです。
そんな普通種なら今までに見ているはずですが,普段目にするのは働きアリで体長3ミリほど。
この個体は,女王アリで体長は1センチほどあります。
小学館『日本大百科全書』(1988年)には,トビイロケアリについて次のように書いてありました。
ヨーロッパ,アジア,北アメリカに広く分布し,日本ではもっとも普通にみられる。体長は働きアリで約3ミリ,女王アリで約1センチ。体は黒褐色で,全体が微毛で覆われる。7月ごろ,一巣当り数千の羽アリが羽化し,早朝に結婚飛行に飛び立つ。近縁種のハヤシトビイロケアリなどは日没前後に飛び出し,灯火にその大群が飛来することがある。巣は材木の腐朽部などにつくり,樹木や草上のアプラムシを保護し,その蜜滴をおもな食料にしている。
「7月ごろ,一巣当り数千の羽アリが羽化し,早朝に結婚飛行に飛び立つ。」とあるので,時期的にはあっています。
分類学上,アリはハチのなかまです。
一般的なハチは女王バチの寿命が1年しかありません。
秋になると巣にいる女王バチや働きバチは全て死んでしまいます。
巣から飛び立った新女王バチが翌春に新しい巣を一から作り始めます。
しかしアリの場合は女王アリの寿命は十数年とされているので,巣はその間維持されています。
アリのコロニーについて,同書には次のように書いてありました。
成熟したコロニーでは,年1回羽アリ(女王と雄)が育てられる。羽アリは夏から秋にかけて羽化し,一般に温度や湿度の高い無風の日に一斉に結婚飛行に飛び立つ。結婚飛行の時刻は種によってほぼ一定しており,クロヤマアリやクロオオアリでは日中,トビイロケアリでは早朝が多く,キイロケアリでは夕方,ハヤシトビイロケアリやカワラトビイロケアリでは日没直後におこる。
夕方から日没直後に結婚飛行を行うケアリ類では,夜間,羽アリの大群が灯火に飛来することがある。交尾は空中または地上で行われ,その後まもなく雄は死に絶える。受精袋に精子を蓄えた女王は,小さな巣室をつくって閉じこもる。やがて王は少数の卵を産み,唾液で幼虫を養う。腹部の脂肪体や不要になった飛翔筋は分解されて幼虫に与えられる。
最初に育てられた個体はすべて矮小な働きアリで,採餌や幼虫あるいは女王の世話を行い,女王は産卵活動に専念するようになる。働きアリの増加とともに女王の産卵力は高まり,コロニーは年ごとに成長していくが,一定の大きさに達すると幼虫の一部から羽アリが育てられるようになる。女王の産卵力には生理的限界があるため,コロニーの成長はやがて頭打ちとなり,女王の死によって滅びていく。
女王アリの寿命が長いうえに,毎年たくさんの新女王アリが巣立つとなると,アリの個体数は相当な数になるはずです。
地球上のアリのバイオマス(生物量)は,人類に匹敵するとか。