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ヒマラヤスギ

2019年12月30日

机の上に置いていたヒマラヤスギの松ぼっくりを持ち上げると,上の部分だけが取れてしまいました。[写真7]
重なり合った鱗片が,木工細工で作ったバラの花弁のようです。[写真2]
これが,いわゆるシーダーローズといわれるもののようです。
初めて見ました。

この松ぼっくりは,11月下旬に,まだ鱗片が堅くしまっているものを枝から採取したものです。[写真5]
机の上に置いて,1~2日すると下の方からしだいに鱗片が開いてゆき,1週間ほどで全部の鱗片が開ききった状態になりました。[写真6]

ヒマラヤスギの球果は,果鱗が果軸にくっついていないため,果鱗はバラバラになってタネと一緒に落下してしまいます。
しかし全てがバラバラになるのではなく,上部は形を保ったまま落下します。
これがバラの形をしているのでシーダーローズといわれ,リースやアレンジの飾りとして人気があります。
[写真9]はシーダーローズを上から見たところ,[写真10]は裏側です。

基部は枝についたまま残ります。
木を見ると,枝のところどころに昨年の松ぼっくりの跡が残っています。[写真11]
皿状の松ぼっくりの基部に果軸が突き出して,燭台のような形をしています。
[写真3]は,今回の松ぼっくりの基部。

[写真1]の松ぼっくりの中間部分を持ち上げて果軸から外すと,[写真8]のようにバラバラに崩れました。
扇形をした果鱗のくぼみに,2個のタネがぴったりとはまっているのがわかります。[写真12]
[写真13]は果鱗の背(下)側,[写真14]は腹(上)側。

『朝日百科 植物の世界』(1997年)には,ヒマラヤスギについて次のように書いてありました。

 ヒマラヤスギはスギの名がついているが,スギの仲間ではない。以前は,長枝と短枝があることや球果が短枝に上向きにつくことからマツ科カラマツ亜科とされていたが,最近は球果の果鱗や材の性質こ基づいてモミ亜科とみる考え方が有力となった。

雌の球花は受粉して1年後に成熟し,広卵形で,長さ7~ 12cmの球果になる。種鱗は扇形,薄い革質,長さ3~4cm,苞鱗は舌状で種鱗よりはるかに小さい。種子は倒卵形,長さ1~1.5cmで,長さ2~3cmの種翼がある。ネパール西部,ガルワール・ヒマラヤ,カシミール地方,カラコルム山脈,ヒンドゥー・クシュ山脈の標高1700~3000mの高地に疎林をつくる。日本には明治時代初期に移入されて,公園や神社仏閣の境内に植えられ,今では各地で樹齢100年を超す大木も見られるようになった。

・スギの名がついているが,スギの仲間ではない
牧野植物図鑑には,スギの名がついていることについて「葉の形がスギの葉に似ていることから来ている」としています。
しかし葉の形を見ると,どう見てもスギではなくマツの葉です。

ヒマラヤスギが海外から移入された明治時代にはどう呼ばれていたのでしょうか。
日本で最初に植えられたヒマラヤスギは,ヘンリー・ブルックが1879年にインドから種を取り寄せて山手公園に植えたものです。
これを周辺の住民はブルック・マツと呼んでいたそうです。
やはり当時の人はヒマラヤスギをマツだと思っていたようですね。

ではどうしてヒマラヤスギという名前が定着したのでしょうか。
調べてみるとmどうも英語名の「Himalayan Cedar」が誤訳されたことが原因のようです。
スギを英語では「Japanese Cedar」といわれることから,「Cedar」は一般的にスギと訳されることが多く,「Himalayan Cedar」もヒマラヤスギと訳されてしまったことが原因のようです。

・長枝と短枝がある
長枝(ちょうし)とは,節間が長くて葉が間隔をおいてついている,つまり普通の枝のことです。
それに対して,短枝(たんし)とは,節間がきわめて短く1~数枚の葉が集まってついている枝のことです。
[写真14][写真15]は,ヒマラヤスギの長枝と短枝。
[写真16]のように,短枝にはたくさんの葉が束になってつき,長枝の先には1本1本の葉が互生してついています。

・球果が短枝に上向きにつく
よく見かけるアカマツやクロマツの松ぼっくりは下向きについていますが,ヒマラヤスギの松ぼっくりは上向きについています。[写真4]
それも巨大な実なので目立ちそうですが,高所の枝についているので意外に目にすることは少ないようです。

・雌の球花は受粉して1年後に成熟
10~11月に開花し,翌年の10~11月に結実します。
毎日横を通っているのですが,雄花も雌花も咲いていた記憶がありません。
来年は気を付けて観察したいと思います。

・種鱗は扇形,薄い革質,長さ3~4cm
[写真12][写真13]

・苞鱗は舌状で種鱗よりはるかに小さい
[写真12][写真13]

・種子は倒卵形,長さ1~1.5cmで,長さ2~3cmの種翼がある
風散布するため,タネには翼がついています。[写真17]
[写真19]はタネを切断したところ。
切り口から液体が滲みだしてきました。
匂いを嗅ぐと,松脂のような匂いがしました。

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