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ジョウゴゴケのなかま

2020年1月23日

冬でも青々とひろがるミズゴケの一画に,色の異なる別種のコケのようなものが生えていました。[写真18]
小さなひょろひょろとした棒状のものがたくさん突き出ています。[写真3]
なかには,先端が盃状をした,いかにも胞子を飛ばしそうなものもあります。[写真2]
無数の不気味な植物が林立する様は,まるでナウシカの腐海を見るようです。[写真5][写真6]

調べたところ,これはコケ(蘚苔類)ではなく地衣類でした。
地衣類は奇妙な生物です。
菌類と藻類が合体したものだそうです。
地衣類の組織断面を見ると,菌糸によって作られた皮層と髄層との間に,藻類の層が存在します。([写真16]は子柄の断面。不鮮明ですが,デジカメではこれが限界です。)
あくまでも合体したものなので,菌類と藻類はそれぞれ別の生物です。

柏谷博之著『地衣類のふしぎ』(2009年)には,地衣類について次のように書いてありました。

 地衣類は菌類のなかまで,緑藻やシアノバクテリア(藍藻)と永続的な共生関係を維持しながら生活する。地衣類は共生の結果,“地衣体”と呼ばれる安定した植物体をつくって生きている。菌類は地衣体の中で安定した生活の場と水や無機物を藻類に与え,代わりに藻類が光合成でつくる栄養(炭水化物)を得ている。

 地衣類が菌類と藻類の細胞で構成されていることが確認されたのは,19世紀中ごろのことである。当初は,菌類と藻類の関係がよくわからなかった。そのため,1960年以前の生物の教科書では,地衣類はコケ類やシダ植物と同様に独立した植物群として扱っていたものが多い。しかし,1952年に改訂された国際植物命名規約により,地衣類の学名は地衣体を構成する菌類に与えられることになった。この決定により,地衣類を単一の生物と見なしてきたそれ以前の考え方とは,まったく違った概念が適用されることとなる。その後,地衣類の分離培養や生化学的な研究が進み,地衣体のなかでの菌類と藻類の構成や物質の流れなどがくわしく研究されるようになった。

地衣類は分類学的には,藻類と特殊な栄養関係でつながっている菌類とされているようです。

今回のコケのようなものが地衣類らしいということは分かったのですが,名前の特定まではできませんでした。
地衣体が樹枝状,子柄が盃状[写真1],内部が中空[写真15]であることから,ジョウゴゴケの仲間かと思うのですが,正確に調べるためには呈色反応や化学成分の分析が必要になってきます。

吉村庸著『原色日本地衣植物図鑑』(1974年)には,ジョウゴゴケが属するハナゴケ属について,次のように書いてありました。

樹枝状の地衣で初心者がハナゴケ属と間違えやすいものは,前述のキゴケ属,センニンゴケ属などのほかにムシゴケ属やサンゴゴケ属(とくにツンドラサンゴゴケ)などがある。本属の種は変異に富み,多くの亜種,変種,品種が記載され,分類の囲難なグループであって,今もなお多くの問題を含んでいる。

ジョウゴゴケおよびその近縁種の分類は,主として化学成分の違いによる。これらの種類を単なるジョウゴゴケの化学的変異(chemicalvariant)とする考え(Lamb,1950)もある。本書は各々独立種とみなす考えに従った。細かく観察すると含有成分の遠いだけではなく,形態的な相違も見出すことができる場合が多い。

さらに,隣り合って生えている,よく似ている地衣類が別種の可能性もあります。
藻類が存在するところに,地衣化する2種類の菌が飛んでくると,姿はよく似ているのに別種の地衣類が隣り合って発生することになります。
○○ゴケモドキとかニセ○○ゴケとか,初心者を惑わす種類がたくさんあります。

直径50cmほどのコロニーですが,子柄の形や子器の付き方など,複数の種類が混じっているのではないかと思えてきました。
やはり顕微鏡が欲しいですね。

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