トベラの実が割れて,鮮やかな赤い色をした種が顔をのぞかせていました。
ねばねばとした透明な粘液が種を覆っています。
写真を撮っていると,いつの間にか指にくっついていました。
こうやって鳥や動物に付着し,種子散布しているのですね。
トベラの種子は単に動物にくっつきやすいだけでなく,おいしそうな赤い色をしています。
被食散布と付着散布を同時におこなっているようです。
小林正明著『花からたねへ-種子散布を科学する-』(2007年)には次のように書いてありました。
粘液による散布は草本に多い。これは”ひっつきむし”と同じく動物が歩く範囲に適応したからである。また粘液はくっ付く力がそう強くないから、種は小さくて軽いものが多い。この方法によるものは全植物種の中でもそう多くない。
また、果肉と粘液の両方をもっていて、果肉を食べた鳥のくちばしなどに付き、他の場所で枝にこすり付けることがある。結果的に種子が散布される。なかにはウチワサボテンやトベラなどのように、果肉等が粘液状になっていて、動物への報酬と粘液を兼ねていると思われるものもある。被食と付着というように2種以上の散布方式をもつものを、複合散布または二重散布といっている。トベラ、ニガウリなどがこの例とされる。