ツルウメモドキの枝に赤い実がたくさんついていました。冬枯れした細い枝に,はじけたように裂開した殻がつき,そこから赤い丸い実がのぞいています。おもしろい形をしているので生け花の花材にもよく使われます。赤い実と書きましたが,果実が赤いわけではなく,赤い部分は種子を覆う仮種皮といわれるものです。

ツルウメモドキ
ツルウメモドキ[ in夷谷町 on2023/1/18 ]

被食散布(動物に食べられることにより不消化の種子を散布する方法)をとる植物は,種子を食べてもらうために様々な方法をとっています。一般的には子房由来の甘い果実を報酬として与えるのですが,果実内部の種皮や仮種皮を使うものもあります。仮種皮は種皮そのものではなく種皮を覆う附属物で,果実の内側に色のついた種子をもつものは多くの場合,仮種皮だそうです。

仮種皮は種皮とは別に胎座や珠柄(胚珠の柄;胚珠を子房につなぎ止めるところ)付近や珠孔(精細胞が入るところ)付近からつくられ,果実の成長とともに大きくなる。種子散布のためにつくられるといえる。(小林正明著『花からたねへ-種子散布を科学する-』(2007年))

ツルウメモドキ(果実)
ツルウメモドキ(果実)[ in夷谷町 on2023/1/18 ]
ツルウメモドキ(果実)
ツルウメモドキ(果実)[ in夷谷町 on2023/1/18 ]
ツルウメモドキ(果実)
ツルウメモドキ(果実)[ in夷谷町 on2023/1/18 ]

仮種皮どうしは結合して一体になっていました。

ツルウメモドキ(仮種皮)
ツルウメモドキ(仮種皮)[ in夷谷町 on2023/1/18 ]

実の大きさによって含まれる種子の数は異なります。

ツルウメモドキ(種子)
ツルウメモドキ(種子)[ in夷谷町 on2023/1/18 ]
ツルウメモドキ(種子)
ツルウメモドキ(種子)[ in夷谷町 on2023/1/18 ]

種子の側面には条線があります。

ツルウメモドキ(種子)
ツルウメモドキ(種子)[ in夷谷町 on2023/1/18 ]

『牧野新日本植物図鑑』(1961年)には,ツルウメモドキについて次のように書いてありました。

1450. つるうめもどき 〔にしきぎ科〕
Celastrus orbiculatus Thrunb.
 北海道,本州,四国,九州の山野にはえるつる性の落葉低木で極めてまれには,幹の直径が20cm位になるものがある。根はオレソジ色。葉は柄があり,互生する。形は円状楕円形で先が急に尖り,基部は円い。表裏面とも毛はなく,大きさはいろいろである。辺に鈍いきょ歯がある。雌雄異株。花は小形で黄緑色をしていて腋生した短かい集散花序に群生する。 5月に開く。 5個あるがく片は卵形。花弁も5個あり卵状長楕円形をしている。雄花は5本の花糸の長い雄しべをもつ。雌花は5本の短かい雄しべと,柱頭が三つに分れた雌しべをもつ。果実は球形のさく果実で秋に熟して3枚のからに裂ける。種子は黄赤色の仮種皮をかぶっている。果実が裂けて黄赤色の種子が露出した枝を生花に使う。〔日本名〕つる性でウメモドキに似た木という意味。従って花屋でツルモドキというのは意味をなさない。