エノキの樹幹に円い葉をつけた蔦がからみついていました。よく見ると円い葉だけでなく所どころにヘラ形をした葉が幹から立ち上がっています。葉裏には茶色い胞子嚢をついています。これはシダ植物ですね。

調べてみると,マメヅタでした。葉が丸い豆に似ていることから付いた名のようです。確かに少し厚みがあってレンズ豆のようです。

マメヅタ
マメヅタ[ in南禅寺福地町 on2023/3/10 ]
マメヅタ
マメヅタ[ in南禅寺福地町 on2023/3/10 ]

『牧野新日本植物図鑑』(1961年)にはマメヅタについて次のように書いてありました。

210. まめづた(まめごけ,いわまめ) 〔うらぼし科〕
Lemmaphyllum microphyllum Presl
(=Drymoglossum microphyyum C. Chr. )
 本州以南の至る所の山中の岩面,石上,樹上等に着生する常緑性多年生草本。根茎は糸状で長く横にはい,1mに達することもある。褐色または暗褐色の小さな線形の鱗片をまばらにつける。葉には胞子葉と尋常葉の2型があり,根茎から出てまばらに並ぶ。尋常葉は短かい柄があり,根茎の両側に表面を上にして平らにならぶ。円形,または倒卵状円形,全縁,厚い肉質で光沢のある淡緑色長さは1cmぐらい。胞子葉は尋常葉にまじって少数つき,長さ2~4cmのせまいへら形で先は円く,脚部はやや長い葉柄となる。中脈部は隆起して,その両側に線形の胞子嚢群がたてにつく。葉脈は網状に結合し,網目の中に遊離脈がある。しかし生の時には外からは脈は全くみえない。〔日本名〕豆蔦,豆苔,岩豆等は葉が小形で円く厚味があるのでマメに見立てたもの。〔漢名〕鏡面草(これからカガミグサの名もある)または螺?草。琉球に行くと本種は葉が大きく,倒広皮針形,倒長卵形で長さ3~7cmぐらいになり,葉質もうすくなる。オオマメゾタ(var. obovatum C.Chr.)という。

「葉には胞子葉と尋常葉の2型があり」と書いてありますが,現在は尋常葉は栄養葉というようです。

マメヅタ(栄養葉と胞子葉)
マメヅタ(栄養葉と胞子葉)[ in南禅寺福地町 on2023/3/10 ]
マメヅタ(栄養葉)
マメヅタ(栄養葉)[ in南禅寺福地町 on2023/3/10 ]

胞子葉の断面はW型になっていて,2列に並ぶ凹みに胞子嚢群がついています。最初は茶色い2本の線のように並んでいますが,熟すと葉身一面にひろがります。

マメヅタ(胞子葉裏面)
マメヅタ(胞子葉裏面)[ in南禅寺福地町 on2023/3/10 ]
マメヅタ(胞子葉断面)
マメヅタ(胞子葉断面)[ in南禅寺福地町 on2023/3/10 ]
マメヅタ(胞子嚢群)
マメヅタ(胞子嚢群)[ in南禅寺福地町 on2023/3/10 ]
マメヅタ(胞子嚢群)
マメヅタ(胞子嚢群)[ in南禅寺福地町 on2023/3/10 ]

胞子嚢群を拡大して見ると,たくさんの昆虫の卵が孵化しているように見えます。幼虫の体節のように見えるものは,胞子嚢の周りについている環帯といわれるものです。乾燥すると胞子嚢の中の胞子をはじき出す装置として働きます。

マメヅタ(胞子嚢群)
マメヅタ(胞子嚢群)[ in南禅寺福地町 on2023/3/10 ]