マツバウンランの花が咲いていました。細長い茎の頂上に紫色の小さな花が数輪開いています。よく見ると変わった形をした花です。花の外側からは雄しべ雌しべが見えないので,のっぺりした感じを受けます。

マツバウンラン
マツバウンラン[ in岡崎法勝寺町 on2023/4/12 ]
マツバウンラン
マツバウンラン[ in岡崎法勝寺町 on2023/4/12 ]

花冠裂片が上下二つに割れた花冠を唇形花冠といいますが,マツバウンランのように下唇が盛り上がって花冠筒をふさいでいるものを仮面状花冠というそうです。確かに仮面をつけているように見えます。

マツバウンラン(花)
マツバウンラン(花)
マツバウンラン(花)
マツバウンラン(花)

花を切断してみると,花冠筒が閉じられた部屋のようになっています。花の奥の下向きに伸びた距には蜜が溜まっています。虫のサイズにもよると思うのですが,下唇と上唇の間を押し広げて入ってきた虫は花冠筒に閉じ込められることになります。そのことが受粉を促すことになるのでしょうか。

マツバウンラン(花・断面)
マツバウンラン(花・断面)
マツバウンラン(花・断面)
マツバウンラン(花・断面)

1941年に京都市伏見区の向島で初めて採取された外来植物です。『牧野新日本植物図鑑』(1961年)には記載がありませんが,その後分布域が拡大していて,2017年発行の『新分類 牧野日本植物図鑑』には掲載されています。

葉を密生する短い枝が地面をはって分枝し,しばしば大きな株となる。
短い枝の葉は長さ1cmほどの線形で対生,または3枚輪生する。

マツバウンラン(地際の枝)
マツバウンラン(地際の枝)[ in岡崎法勝寺町 on2023/4/12 ]
マツバウンラン(地際の枝と根)
マツバウンラン(地際の枝と根)

直立する茎は細く,長く,高さ1O~60cmに達することもある。

マツバウンラン(直立茎)
マツバウンラン(直立茎)

直立茎の茎葉は互生,形は松葉状の線形で長さ1~3cmほどあリ,まばらにつく。

マツバウンラン(直立茎の葉)
マツバウンラン(直立茎の葉)

春から夏にかけて茎頂に総状の花序を伸ばし,青紫色の小さな唇形花を次々に咲かせる。
花序は開花時には比較的短く,花とつぼみは密生するが,開花のあとで伸長する。

マツバウンラン(花序)
マツバウンラン(花序)

がく筒は短い鐘形で上半部は5裂し,花冠は長さ5-~1Ommで深く上下2唇に裂け,さらに上唇は2裂,下唇は3裂する。下唇の基部には2本の白い枝があり,背後に伸びる距(きょ)は数mmの長さがあって開花時には真下を向くことが多い。

「下唇の基部には2本の白い枝があり」とはどういう意味かなと思ったのですが,白いふくらみのことのようです。誤植なのか学術的表現なのか。

マツバウンラン(花)
マツバウンラン(花)

受粉後は,距をつけた花被がまるごと抜け落ちます。

マツバウンラン(脱落した花冠)
マツバウンラン(脱落した花冠)
マツバウンラン(脱落した花冠)
マツバウンラン(脱落した花冠)

さく果は長さ3mmほどで,がく筒とほぼ同長か,やや長い程度である。

子房が膨らみはじめたものが付いていました。

マツバウンラン(未熟な果実)
マツバウンラン(未熟な果実)
マツバウンラン(未熟な果実・断面)
マツバウンラン(未熟な果実・断面)