ネジバナの花が咲いていました。一つひとつの花は小さいのですが,空にむかって果てしなく咲き続けるような螺旋の形は心惹かれます。

ネジバナ
ネジバナ[ in南禅寺福地町 on2023/7/14 ]
ネジバナ(花穂)
ネジバナ(花穂)
ネジバナ(花穂)
ネジバナ(花穂)

ネジバナの花をじっくり見ると,唇弁や距のある構造など,小さいながらラン科の特徴を具えています。
『日本の野生植物』(2016年)にはラン科の花について次のように書いてありました。

一般に左右相称。外花被片(萼片)3個はほぼ同形であるが,内花被片(花弁)は左右2個が同形であるのに対し,中央の1片は形,大きさ,色彩などが顕著で目立つので、特に唇弁と名づけられ,その基部はしばしば嚢または距となる。ふつう唇弁は下方にあるが,本来は上方で,子房が180度ねじれることによって下に位置している。

(ネジバナ属について)花は小型で,白色または淡紅色,一方に偏るか,またはらせん状に総状に多数つける。萼片はほぼ同形で離生し,背萼片は側花弁とともにかぶとをつくる。側萼片の基部は袋状となる。唇弁は直立し,背面はふくれて蕊柱を囲み,全縁または3裂し,内面にいぼ状突起または板状突起がある。

ネジバナ(花・外観構造)
ネジバナ(花・外観構造)
ネジバナ(花)
ネジバナ(花)
ネジバナ(花)
ネジバナ(花)

(ラン科について)雄蕊は1-2個が完全で,他は退化し,まったく消滅するか,または仮雄蕊として残存する。雄蕊は雌蕊と合着して1個の柱状体を形成し,これを蕊柱とよぶ。蕊柱には先端の上面に葯,下面に柱頭がある。葯はふつう2室,一般にかたく結合した花粉塊を1-8個入れる。花粉塊は粘質,粉質,蝋質などの差が見られ,多くの種では送粉者の体に張りつくための粘着体がある。 花粉塊と粘着体はしばしば花粉塊柄でつながっている。柱頭は3個,うち1個は発達しないことが多く,変形して小嘴体となり,一方では受粉を助け,一方では自家受粉を防ぐ役目を果たす。

(ネジバナ属について)蕊柱は短い円柱形。柱頭は小嘴体の下にあり幅広く,小嘴体は上向きで鈍頭,伸長して2裂する。葯は直立し2室。花粉塊は粉質,細い粘着体につながる。

まとめると
・雄しべと雌しべは合着して短い円柱形の蕊柱を形成している。
・蕊柱の先端の上面には葯が2室あり,花粉がかたく結合した花粉塊が入っている。花粉塊には送粉者の体に張りつくための粘着体がある。
・蕊柱の先端の下面には柱頭が3個あるが,うち1個は変形して小嘴体(しょうしたい)となっている。小嘴体は上向きで鈍頭,伸長して2裂している。柱頭は小嘴体の下にあり幅広い。(小嘴体は花粉塊と柱頭を隔てる仕切りで,自家受粉を防ぐ効果があるとされています。)

縦に切って中の構造を見てみました。

ネジバナ(花断面・構造)
ネジバナ(花断面・構造)
ネジバナ(花断面・構造)
ネジバナ(花断面・構造)

かぶと(背萼片と側花弁が密着したもの)を外し,上から見たところ。

ネジバナ(花構造・上から)
ネジバナ(花構造・上から)

唇弁を外し,下から見たところ。

ネジバナ(花構造・下から)
ネジバナ(花構造・下から)