大きな黒い蝶が地面にとまっていました。あまりに大きいのでドキッとしました。
時々,動くものの,翅がずっと開いたままです。何か様子が変です。近づいてみると,だいぶ弱っていて,飛ぶことができないようです。
それにしても美しい蝶です。翅全体に散りばめられた青緑色の鱗粉がキラキラと輝いています。初めて見る蝶です。

ミヤマカラスアゲハ(夏型♀)
ミヤマカラスアゲハ(夏型♀)[ in南禅寺下河原町 on2023/8/25 ]
ミヤマカラスアゲハ(夏型♀)
ミヤマカラスアゲハ(夏型♀)[ in南禅寺下河原町 on2023/8/25 ]

小さなアリがたくさん集まってきています。アリを払って持ち帰りました。

ミヤマカラスアゲハにたかるアリ(夏型♀)
ミヤマカラスアゲハにたかるアリ(夏型♀)[ in南禅寺下河原町 on2023/8/25 ]
ミヤマカラスアゲハ(夏型♀:表)
ミヤマカラスアゲハ(夏型♀:表)
ミヤマカラスアゲハ(夏型♀:裏)
ミヤマカラスアゲハ(夏型♀:裏)

北隆館『新訂原色昆虫大図鑑』(2007年)には,ミヤマカラスアゲハについて次のように書いてありました。

<特徴・♂♀の区別点> カラスアゲハと混同されることが多いが、 後翅裏面に黄色帯 (しばしば痕跡的となる) があれば本種と同定して間違いない。 また、前翅裏面外半の白色帯はふつうほぼ平行となり、この傾向は表面の緑黄色帯に同様にあらわれることが多い。 また、前翅の形は外縁がやや凹み、先端が細く突出する傾向がある。 また、夏型は著しく大型となり、日本3大巨蝶と指名されるゆえんである。 ♂は他のカラスアゲハなどと同様前翅表にビロード状の性標があり、♀は♂よりも地色が淡く、青緑色の鱗粉は黄色味を帯び、後翅亜外縁の半月状赤斑も大きく発達する。 一般にカラスアゲハより稀である。

・後翅裏面に黄色帯 (しばしば痕跡的となる) があれば本種と同定して間違いない。
後翅裏面に消えかかっていますが黄色帯(白色に見えます)があります。カラスアゲハではなくミヤマカラスアゲハで間違いないようです。
・前翅裏面外半の白色帯はふつうほぼ平行となり、この傾向は表面の緑黄色帯に同様にあらわれることが多い。
この個体の前翅裏面白色帯は帯状にならず拡散しています。表面の緑黄色帯は帯状になっています。

ミヤマカラスアゲハ(夏型♀:翅特徴)
ミヤマカラスアゲハ(夏型♀:翅特徴)

・夏型は著しく大型となり、日本3大巨蝶と指名されるゆえんである
この個体もとても大きいです。開帳は13cm,前翅長は7cm。腹部も太く,がっしりとしています。
ちなみに「日本3大巨蝶」でネット検索しましたが,出てきませんでした。日本の大きな蝶といえば,他にオオゴマダラ,オオムラサキ,モンキアゲハなどでしょうか。

ミヤマカラスアゲハ(夏型♀)
ミヤマカラスアゲハ(夏型♀)
ミヤマカラスアゲハ(夏型♀)
ミヤマカラスアゲハ(夏型♀)

・♂は他のカラスアゲハなどと同様前翅表にビロード状の性標があり、♀は♂よりも地色が淡く、青緑色の鱗粉は黄色味を帯び、後翅亜外縁の半月状赤斑も大きく発達する。
この個体の前翅表にはビロード状の性標がありません。したがって♀です。

ミヤマカラスアゲハ(夏型♀:前翅表)
ミヤマカラスアゲハ(夏型♀:前翅表)

前後翅の表全面に青緑色の鱗粉が塗布されていて,日光下で見ると翅全体が緑色に輝いて見えます

ミヤマカラスアゲハ(夏型♀:鱗粉)
ミヤマカラスアゲハ(夏型♀:鱗粉)

本個体にたかっていたアリはキイロシリアゲアリのようです。

キイロシリアゲアリ
キイロシリアゲアリ