9月に入っても記録的な暑さが続いていますが,季節は確実に進んでいるようです。
あれほど鳴いていたアブラゼミの声が聞こえなくなりました。聞こえてくるのはミンミンゼミとツクツクボウシの声ばかりです。
寿命を終えて地面に落ちているアブラゼミの死骸を拾って,雌雄の違いを比較してみました。

背面から見比べると,違いはほとんどありません。

アブラゼミ(背面)
アブラゼミ(背面)[ in on ]

腹面を見比べると,雄には大きな腹弁が,雌には産卵管があるのがわかります。

アブラゼミ(腹面)
アブラゼミ(腹面)[ in on ]
アブラゼミ(腹弁・産卵管)
アブラゼミ(腹弁・産卵管)[ in on ]

腹弁は後胸の一部が発達したもので,腹面とのすき間を開閉し,セミ独特の鳴き声のリズム・抑揚をつけるのに使います。鳴く雄の腹弁は大きく発達し,鳴かない雌には腹弁がありません(小さい)。(雌については,腹弁が「ない」と書いてあるものと,腹弁が「小さい」と書いてあるものがあります。腹弁が鳴き声の調整に使われるものだとすると,鳴かない雌には「ない」とするべきなのでしょうか。見た目には小さな腹弁に見えますが。)

雄には腹弁の内側に発音器があります。切断して中を覗いてみると,V字形をした太いゴムのような発音筋がありました。

アブラゼミ(発音器)
アブラゼミ(発音器)[ in on ]

日本大百科全書(ニッポニカ) には,セミの発音器について次のように書いてありました。

セミの雄の発音器は大きく分けて、次の三つの部分からなる。
(1)音(基音)を発生する部分 これは腹部第1~2節の変形によるもので、V字状に腹面で癒合した1対の太い発音筋と、その先端(背面側)に付着する貝殻のような形をした発音膜(tymbal)である。発音筋と発音膜は三角形の薄い腱(けん)で連結される。筋肉のすばやくて振幅の小さい伸縮により発音膜が振動する。
(2)音を増長する共鳴室 腹部内にみられる空間で、ときには共鳴室が発達して腹部全体が空洞のようになることがある。
(3)鳴き声のリズム・抑揚をつける部分 背弁と腹弁がこれにあたり、発音器の保護も兼ねている。とくに腹弁(後胸の一部が発達したもの)は、腹面側を覆い、すきまを開閉することにより、種独特の鳴き声となる。腹弁の形状は種により多少とも異なっていて、同定に役だつ部分である。

「音を増長する共鳴室」は鳴く雄だけにあり,当然ながら雌にはありません。雌の腹部を切断してみると,卵のような粒々がたくさん詰まっていました。

アブラゼミ(♂:縦断面)
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アブラゼミ(♀:縦断面)
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