2023年09月10日

歩道にハグロトンボがとまっていました。近づいても逃げる気配がないので,手を伸ばすと,……捕れました。だいぶ弱っているようです。

ハグロトンボ
ハグロトンボ[ in南禅寺草川町 on2023/9/5 ]

副性器と付属器があるので♂です。

ハグロトンボ
ハグロトンボ
ハグロトンボ(副性器)
ハグロトンボ(副性器)
ハグロトンボ(付属器)
ハグロトンボ(付属器)

翅全体が黒いトンボには,ハグロトンボとアオハダトンボがいます。
ハグロトンボとアオハダトンボの相違点について,『近畿のトンボ図鑑 』(2009年)には次のように書いてありました。

アオハダトンボに似るが、 翅型は細長く、♂の翅は青藍色を帯びない。 腹端腹側にアオハダトンボのような白色部はない。 また♀の翅には偽縁紋がない。

本種(注:アオハダトンボ)♂には翅に金属光沢があり、腹端の裏側が白いこと、 ♀では前翅の色が薄く、白い偽縁紋 (縁紋と違い翅脈で囲まれず、 横脈が入っている) があることで区別できる。

本個体の翅は「細長く,青藍色を帯びない」のでハグロトンボだと分かります。

ハグロトンボ(翅)
ハグロトンボ(翅)

また腹端腹側に白色部はありません。

ハグロトンボ(腹部下面)
ハグロトンボ(腹部下面)
ハグロトンボ(胸部)
ハグロトンボ(胸部)
ハグロトンボ(脚)
ハグロトンボ(脚)
ハグロトンボ(頭部)
ハグロトンボ(頭部)

2016年8月21日

ハグロトンボ♀。♂は緑色の金属光沢があるが,♀は黒褐色。


2009年6月19日

動物園南の疎水に,羽化したばかりのハグロトンボがいました。[写真1]~[写真3]

2007年7月5日にも同じ場所で,羽化したばかりのところを見つけています。(→2007年7月8日

この場所を通るのは,いつも朝7時頃。
どちらも,羽化してから1時間30分~2時間はたっていると思うので,いつも羽化するのは日の出後,間もない頃ではないでしょうか。

羽化したてで胴体が白く,雌雄の区別がつきません。
ビニール袋に入れて持ち帰り,体色の変化を見ることにしました。

ハグロトンボは体色が金属緑色ならば雄,黒褐色ならば雌です。

[写真4]体色は金属緑色に変化しています。雄でした。

[写真5]は顔のアップ。
トンボには複眼の他に,単眼が3個あります。
顔のほとんどを占めていると言ってもいい,大きな複眼をもっているのに,さらに単眼を3つも持っているとは。
単眼の役割について,阿達直樹著『昆虫の雑学事典』(2007年)には,次のように書いてありました。

昼間よく活動する昆虫は,このほかに2~3個の単眼を持っています。
単眼を日時計代わりに使って,生活のリズムを決める手がかりにしていると考えられています。

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2007年7月8日

動物園南の疎水べりに,羽化したばかりのハグロトンボがいました。

胴体も翅も,うすい色です。
羽化してからどのくらい経っているのでしょうか。
正面からの写真を撮ろうと,カメラを顔に近づけると,ひらひらと飛び立ちました。
飛べるということは,かなり時間が経っているのかもしれません。

飛び立ったハグロトンボはすぐ近くの石垣にとまり,またじっとしています。
羽化した後の若い個体は,水域を離れて薄暗い林の中で生活するそうです。
この近くで,木がたくさん茂っているところといえば,道を隔てたとろこにある無隣庵庭園でしょうか。

トンボのなかまは,体の特徴で大きく3つのグループに分けられます。

・均翅亜目(イトトンボ亜目)
腹部が細く,前ばねと後ばねが同じ形をしています。複眼は左右に大きくはなれています。ふつう4枚のはねを閉じてとまります。
ハグロトンボはこの均翅亜目に属します。

・不均翅亜目(トンボ亜目)
腹部が太くて頑丈な体つきをしています。前ばねより後ばねのほうが幅が広く,早く飛ぶことができます。多くの種で左右の複眼が接しています。はねを開いてとまります。

・ムカシトンボ亜目
腹部が太くて,前ばねと後ばねは同じ形をしているという,均翅亜目と不均翅亜目をまぜたような姿をしています。複眼は左右に離れています。はねは,とまったときは半開きで,とまっているうちに閉じてきます。

[写真4]左は均翅亜目のハグロトンボ,右は不均翅亜目のオニヤンマ。(オニヤンマも羽化直後なのではねを閉じています)

[写真2]を見ると,あしにたくさん刺がはえています。これは獲物を捕らえるのに役立ちます。
トンボのあしは後ろにいくほど長くなっていて,枝先にとまったり,獲物を捕らえるのに適したかたちになっています。

学習研究社「原色ワイド図鑑 昆虫Ⅰ」には,ハグロトンボについて次のように書いてありました。
『6~10月(南日本では5月中旬~11月中旬),平地の小川に多い。からだは,おすでは金属緑色であるがめすでは黒褐色。水面をひらひらとぶのはすずしげで,夏の風物詩といえるが,いっぽう,小川のそばの木かげの草の葉などにとまってはねを開閉しているのは神秘的である。この姿から各地にホトケトンボやカミサマトンボなど方言名がある。めすは単独で“植物組織内産卵”をおこなう。』

「めすは単独で」とは,雄と交尾後,連結をといて雌が単独で産卵するという意味です。
「植物組織内産卵」とは,水草などの植物の茎の中に産卵することをいいます。
トンボの産卵のしかたにはいろいろな方法がありますが,主な方法としては「植物組織内産卵」と,飛びながら尾を水に打ちつけて産卵する「打水産卵」があります。
これらの産卵方法は,種によって決まっています。

写真追加:[写真5]2007年7月19日撮影

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2006年8月13日

動物園南の疎水にいたハグロトンボ。シルエットになると,何かもう夏も終わりかな,という雰囲気になります。
ハグロトンボ


2005年6月17日

動物園南の疏水にいたハグロトンボ。「ハグロ」から「お歯黒」を連想してしまうのですが,常識的には「ハグロ」は「羽黒」だろうと思っていました。今回,名前の由来を調べてみると,以外にも「ハグロ」は「お歯黒」を意味し,むかしはオハグロトンボと呼ばれていたそうです。
ハグロトンボ