スイセンの花が咲いていました。白い花弁の中央に,黄色い副花冠をつけた清楚な花です。良い香りがします。
花の構造といい,芳香を放つところといい,ポリネーターをおびき寄せる条件は整っているのですが,3倍体であるがために結実しません。自然に出現した3倍体で,結実するエネルギーを球根の成長へ向けているとか。
花弁と萼はほぼ同形同色なので,萼片を外花被,花弁を内花被といいます。
花を切断して,構造を見てみました。
副花冠,内花被,外花被が合着して筒状になっています。葯は花筒から出た1mmほどのごく短い花糸の先につき,上部に3個,下部に3個あります。
花糸の痕跡らしい縦筋があるところからすると,元々6本だった雄蕊が合着して副花冠を形成しているように見えます。
『日本の野生植物』(2016年)にはスイセンについて次のように書いてありました。
本州(関東以西)・九州の海岸に生えるが真の自生ではない。地中海沿岸からアジア中部・中国に自生するものが古く渡来して野生状態になったものと考えられる。鱗茎は広卵形で外皮は黒い。葉は帯状,粉緑色で長さ20-40cm,幅8-16mm,先は円い。花茎は12-4月に出て,高さ20-40cmになり,先に数個の花が散状につき,長さ3-6.5cmの膜質の苞がある。花柄は長さ4-8cmで同長ではない。花は芳香がある。花被裂片は白色で,広楕円形から卵形,先端は短くとがり,長さ約1.5cm,平開する。筒部は粉緑色で長さ約2cm。副花冠は黄色,杯状で,長さは花被裂片のおおよそ半分以下。雄蕊は6個,花糸はごく短くて長さ約1mm,花筒の上部とその下部に3個ずつ交互につく。葯は長さ約3mm,花柱は副花冠より短い。結実しない。