前回からの続き)
ムシヒキアブ亜科であることは判明したのですが,それから先が難しいですね。
北隆館『新訂 原色昆虫大図鑑 第3巻』(2008年)に載っているムシヒキアブ亜科の種は,トラフムシヒキ,サキグロムシヒキ,アガリケムシヒキ,シロズヒメムシヒキの4種類です。
しかし実際には,日本で確認されている種はこの他にもあり,未記載種も多いそうです。
図鑑に掲載されている中では,シロズヒメムシヒキが最も該当しそうなのですが。

北隆館『新訂 原色昆虫大図鑑 第3巻』(2008年)には,シロズヒメムシヒキについて,次のように書いてありました。

体長14~20mm。黒色。全身灰白ないし灰黄粉で被われる。口上毛は黄白で上部に黒毛があり,後頭背縁に列生する黒色刺毛は短くて前種のように前屈しない。触角第3節は前2節の和と等長,端刺はそれよりやや長く,基部に短い微節,末端に淡色微刺を持つ。胸背は斑紋を生じ,側・後縁の黒色刺毛以外の毛は非常に短い。小盾板後縁刺毛は2本。腹部は黒毛及び黄毛を疎生し,各節後縁の白粉は鮮明で,光線の具合により横帯を生じ,後縁両側には黄白刺毛が存在。♂交尾器の上鋏子は背面に内側に向いた突起を持つ。産卵管は末端に赤褐の刺状突起がある。

・体長14~20mm
体長は14mmで該当します。[写真3]

・黒色。全身灰白ないし灰黄粉で被われる。
[写真2]などを見ると,全身を細かい粉に被われているのがわかります。
しかし,ガのような粉っぽい感じはありません。

・口上毛は黄白で上部に黒毛がある
とにかく体が小さくて,肉眼ではどこに毛が生えているか,毛の色などは判別できません。
写真で拡大して見ると,口吻の上方に白っぽい勅毛がまとまって生え,上部は黒毛になっています。[写真5]

・後頭背縁に列生する黒色刺毛は短くて前種のように前屈しない
前種というのはマガリケムシヒキのことで,「曲がり毛」の名の通り,後頭背縁に列生している黒色刺毛が前方へ直角に曲がっています。
[写真5]を見ると,後頭背縁には真っすぐな黒色刺毛が生えています。

・触角第3節は前2節の和と等長,端刺はそれよりやや長く,基部に短い微節,末端に淡色微刺を持つ
[写真6]を見ると,第1節と第2節を合わせた長さは第3節とほぼ等しい長さになっています。
端刺の長さも第3節よりやや長くなっています。
端刺の「基部に短い微節,末端に淡色微刺を持つ」かどうかまでは見分けることができませんでした。

・胸背は斑紋を生じ,側・後縁の黒色刺毛以外の毛は非常に短い
[写真4]のとおり

・小盾板後縁刺毛は2本
[写真7]のように,小盾板の後縁には2本の刺毛があります。

・腹部は黒毛及び黄毛を疎生し,各節後縁の白粉は鮮明で,光線の具合により横帯を生じ,後縁両側には黄白刺毛が存在
[写真8]のとおり

・♂交尾器の上鋏子は背面に内側に向いた突起を持つ
本個体は♀なので,♂交尾器はわかりません。

・産卵管は末端に赤褐の刺状突起がある
[写真8]の腹部末端にある産卵管には刺状突起は見当たりません。
あらためて,産卵管を3方向から写したものが[写真9]。
棘のようなものがありますが,これが「赤褐の刺状突起」なのかどうかわかりません。

全体的に見てシロズヒメムシヒキの特徴にほぼ合っていますが,産卵管の刺状突起が気になるところです。

本個体が捕えていた虫は,羽アリでした。
中胸背板に口吻が貫いた痕があります。[写真10]