• ウワミズザクラ
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ウワミズザクラの花が咲いています。総状花序の花は,サクラといわれてもぴんときません。一つ一つの花も見ても,サクラの花には見えません。確かに,花が散り葉が茂ったようすはサクラなのですが,どうしてこの花がサクラの仲間に分類されるのか不思議です。いくら分類学上サクラであっても,花が「サクラ」でなければサクラではないですよね。サクラは,花が命ですから。

ウワミズザクラの語源については,鹿ト(かぼく。鹿の肩甲骨の裏側に溝をつけて焼く古代の占い)を行なう際に,この木を燃やしたことにより「占溝桜(うらみぞざくら)」と呼ばれ,それが転じて「ウワミズザクラ」になったという説があります。

鹿トとはどういうものだったのか。「平凡社 世界大百科事典」の「ふとまに(太占)」の項に次のように書いてありました。
『その方法は,《古事記》天岩屋戸の段に〈天香山の真男鹿(まおしか)の肩を内抜きに抜きて,天香山の天波波迦(あめのははか)を取りて,占合(うらない)まかなはしめて〉とあるように,鹿の肩甲骨を波波迦(ははか)(カニワザクラのこと,ウワミズザクラの古名という)にて焼き,割れ目の模様でうらなうものであった。』

鹿の骨を焼く「鹿ト(かぼく)」は,令制以降は海亀の甲を焼く「亀ト(きぼく)」へと変わったそうです。でも鹿にしろ亀にしろ,焼くときにはウワミズザクラの木を使用したのは何故でしょうか。神聖な占いのための火をおこす道具ですから,どんな木でもよいという訳にはいかなかったのでしょうが,ウワミズザクラが選ばれた理由は何でしょうか。