ミヤマクワガタ。
九条山界隈のものではなく,子どもが福井県で捕まえたものです。
ミヤマクワガタの雄の頭部は,粘土を上から押しつぶして両側にはみ出したような独特の形をしています。
この出っ張りを「耳状突起」といいます。
大きな個体の耳状突起は出っ張りも大きいですが,小型のものは出っ張りが小さく「小型になるとだんだん弱まり殆ど消失するに至る」(『原色日本昆虫図鑑(上)』)そうです。
ミヤマクワガタの大あご(大腮・だいさい)は,次の3タイプに分けられます。これらの発現には遺伝的な要素よりも成長過程の気温などの後天的要素による影響が大きいと考えらています。
・サト(フジ)型
大腮基部に最も近い第1内歯が大きく発達し,大腮を閉じると第1内歯の両端が触れて,大腮先端が離れる。大腮先端部の二股は小さい。
・ヤマ(基本)型
大腮第1内歯はやや発達し,第3内歯よりも長い。大腮先端はサト(フジ)型よりもやや大きく,二股に広がっている。
・エゾ型
大腮第1内歯は他の内歯に比べ最も小さくなる。大腮先端は他の型に比べて最も大きく,二股に分かれている。
写真の個体は,ヤマ(基本)型のようです。
ちなみに[写真5]は,九条山の自宅前で採取したもの。(2001年7月)
(当時。子どもの夏休みの工作でアクリルに封入したものなので,写真が不鮮明です)
こちらも,ヤマ(基本)型のようです。
ミヤマクワガタは,すべての脚の脛節に,刺(外歯)があるのも特徴です。[写真3]
『ミヤマクワガタ類は脛節(けいせつ)が長く,中脛節には3個以上,後脛節には2個以上の外歯(がいし)があるが,他のクワガタムシではないか1個,まれには中脛節で2個の外歯があるだけである。』(「新装版山渓フィールドブックス 甲虫」)