• ケケンポナシ
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ケケンポナシはすっかり葉を落とし,樹下には落ち葉とともに実をつけた小枝が落ちています。

ケケンポナシとは変な名前ですが,毛のあるケンポナシという意味です。
ケンポナシとケケンポナシの違いは,保育社「原色日本植物図鑑」(1989年)によると
ケケンポナシ
果実は有毛,葉はやや厚く,下面は花序と共に毛があり,鋸歯は低平で時に一部不明となる
ケンポナシ
果実は無毛,花序および葉の下面も通常毛がない。鋸歯は斜3角形で鋭頭』

ケンポナシの分布域は「北海道奥尻島,本州,四国,九州,朝鮮半島,中国中・西部」なのに対し,ケケンポナシの分布域は「本州,四国」です。
分布域から見てケケンポナシはケンポナシよりマイナーな種類なのかと思っていましたが,ケンポナシの説明に次のように書いてありました。
『山では前種(ケケンポナシ)に比してごくまれである。』
山ではケケンポナシのほうがメジャーな存在であるようです。

丸い実の中には,3個の黒い種子が入っています。
この実は食べられませんが,くねくねと曲がって,ぷよぷよとしている果柄は甘くて食べることができます。
鼻に近づけると甘い匂いがします。
[写真2]は,果柄の切断面です。

名前に「ナシ」がついていることから,「ナシのような味」と書いてあることが多いのですが,(昔のナシはこんな味だったのかもしれませんが)私は黒砂糖とか干しブドウの甘みに近いと思います。

初夏に花が咲いて[写真5],8月ごろには果柄が膨らみはじめ[写真4],9月にはかなり肉質な感じになってきます[写真3]。
この頃にはまだ甘くありません。
葉が落ち,枝ごと実が落ちる時分になると,肉質な果柄の部分から甘い香りがします。

私たちが果物として食べているものは,花の色々な部分が太ったものです。
カキやミカンなど普通は子房の壁の部分を食べているのですが,ザクロは種子の皮の部分,パイナップルはいくつかの子房が融合したもの,イチゴは花床とそれについた子房,と意外な部分を食べているものも多くあります。
果柄の部分を食べるというのも,かなり変ですよね。